朝三時ごろに目が覚めた。
確かにこの日は早く起きなくてはならなかったが、それでも三時に起きる必要はなかった。
いつもならば布団の中でもう少し眠っても良かったのだろうが、
脚に激痛が走った。
同時にビリビリビリと衣服を引き裂くような音が鳴った。
脚が痛い。
感覚としては針金に引っかかったような感覚。
脚は明確な痛みをもって僕にうったえかけてきた。
「布団の中に何かが居る」
僕は足が引き裂かれたその部分へと手を伸ばした。
そして、またビリビリビリと衣服を引き裂くような音が鳴った。
親指がやられた。痛い。激痛だった。
電気をつけた。
布団の中には何もいない。
しかしながら脚には切り傷のようなものがあった。
左足を念のために見ると同じような切り傷が二か所存在した。
合計4か所の切り傷。
これは一体何なのだろうか。
怖い。
しかしこの日の僕はそんなことに構っている暇などなかった。
動画技術を団体の後輩に引き継がなくてはならない日だからだ。
通常引き継ぎといえば事務的なつまらないものだが、動画技術自体、
そういったマンネリをくつがえすために活用してきた。
そんな僕がつまらない真似をするのは許されない。
そう思ってPPTと動画式タイトルの準備をした。
11時から17時後半まで、後輩2人と僕は動画を練習し続けた。
声なしの環境でこんなカルチャースクールみたいなことをするとは……。
動画を学び始めた頃の僕は想像すらしていないだろう。
正直これだけでも疲れていたのだが、ここからいつも通りに会議があった。
今回は全く内容が頭に入ってこず、音の重要性を思い知らされた。
音の情報ならば恐らく半分くらいは頭に入れることが出来ただろう。
そして午後10時。
この時点でやはり疲れていたのだが、
僕は東京に行かなくてはならなかった。
ここから夜行バスに乗るのだ。
どうしてこんな無茶なスケジュールを組む羽目になってしまったのだろう。
それは不動産……いや、マンションの管理会社ががめつき日割りの家賃を請求してきたからである。
新社会人応援物件などもあるなか、全く家に住むわけでもない、2月と3月分の家賃まで請求されるとは。
僕はまだ親の力が(財)ある分、そこから禁中策として借りることが出系るのだが、
実際どれだけの学生がこの急激な日程調整と請求に対応できるのだろうか。
この世の中良い物件に手を出すというのは諸刃の剣であるようだ。
というわけで、何度目になるかはわからないが、
夜行バスで東京に向かうことにする。