家を探してやってきたこの土地へ 2/1 | no title

no title

高をくくる

 

   

 

またこの場所にやってきた。

東京。

相変わらずなぜかエスカレーターの乗る場所が左右逆で、電車の乗り方に自信がなくなるような人々がごったがえした土地である。

 

またしてもここに来たのは家を探しに来たからだ。

ここまでやって卒業できなかったらどうしよう。

後戻りはもうできないところまで来てしまった。

どうか、卒業できますように……などということを願う時点で間違っているのだが。

何とかするしかない。

 

思えば最近博打のようなことばかりしている。

しかしながら、意味のある博打ではなく、単に準備不足の博打は、若い奴らのいう「ワンチャンあるで!」に近く、正直言って自分が情けなくなる。

 

飛行機で今回は東京にやってきた。

早い。1時間もたたずに大阪と東京を渡ることが出来るとは。

PCで資料を作っている間についてしまった。

 

久しぶりについた東京から数駅移動し、エイブルの事務所を訪ねた。

名紙を渡され、自分から提案したアパートと、担当の方が選んでくれたアパートを比較検証した。

担当の方が勧めてくれたのがいくつか。

正直自分で頑張って探したアパート達は殆どが申し込まれてしまい、見る事すら叶わなくなっていた。

さて、次は自動車を走らせることになった。

中々目的の場所までは遠かった。

1時間以上車に揺られた。僕は多少酔ってしまった。

 

1つ目に内見に来たのはアパートだった。

築は30年前後だったろうか。

郵便受けがボロボロでボルトが外れていたような気がする。

中に入ると、広かったが異臭がした。これはトイレのにおいだ。

よく駅で異臭がするトイレスペースがあるが、そのにおいがその部屋からたちこめていた……気がした。

しかしながら、この部屋は広い。2LDKである。

それがあいまってこの環境を生み出しているのだろう。

広さを得ようとすれば何かを失うのは当たり前である。

しかしながら、僕は2LDKも一人暮らしで使うだろうかと考えたが、使わない気がした。

ルームシェアをするならばまだ話は分かるのだが……。

 

話を聞くには内見候補の部屋が広いタイプのアパートは

大体同じ雰囲気だという。

正直車に乗っていた時間が予想以上に長くて、少しナイーブになっていたのもあり、

僕は同じタイプのアパートの内見を断ることにした。

 

次に来たのはマンションだった。

10階ほどある新築のマンションで、さっきのアパートと比べてしまうとレベルの違いが感じられた。

高級ホテルと小屋くらいの印象の違いがあった。

僕は入って目に入る郵便受けに惹かれてしまった。

白と黒の郵便受け。

なんだか僕のカッコつけの好奇心をくすぐられる。

 

カーペットがひかれた清潔感漂う廊下。

最上階の角部屋という環境。

部屋自体は狭かったがそれを余りあるかっこよさが胸を締め付けてくれた。

 

僕はこの部屋を申し込むことに決めた。

さて、この選択は後々僕にどんな影響を与えるのだろうか。

今日の選択はきっと僕の人生に関わる事だろう。