あまり印象に残っていない作品です。


老人は王様に小さな箱を差し出します。箱の中には粉が詰まっていました。
老人の話では、これは魔法の粉だそうです。
この粉の匂いを嗅いで『ムタボール』という魔法の文句を唱えれば、
動物に化けられるらしいのです。
また、動物に姿を変えている間は笑ってはいけないそうです。
笑ってしまうと、『ムタボール』という文句を忘れてしまって、
元の姿に戻れなくなるのです。
池の近くに二羽の鸛(コウノトリ)がいます。
王様と大臣は粉の匂いを嗅ぐと、声を揃えて『ムタボール!』と唱えました。
たちまち二人は鸛に姿を変えました! それと同時に、二羽の鸛の声が聞こえてきます。
『あの五位鷺の奥様って、嫌な方ですよねぇ』
『そうですわねぇ』
『この間のことですわ。カエルを捕まえたから持っていってあげましたの。
すると、『私たちはドジョウしか食べません』なんて言ったのよ』
『まあ! 失礼しちゃいますわね』
『し、しまった! 大臣、魔法の文句は覚えているか?』
『それがさっぱり…』
一大事です! このままでは、二人は鸛の姿で一生を過ごすことに…
王様と大臣が城の上で羽を休めていると、騒がしい一団がやってきます。
『新しい王となったミズラ様に拍手を!』
町の人々が歓声を上げています。
『あのミズラが王だと!?』
王様の顔色が変わりました。ミズラというのは非常に悪賢い男です。
今までに何度も城を乗っ取ろうとした悪人なのです。
『魔法の粉を持ってきた老人はミズラの手先だったのだ!』
ミズラは王位を奪うために、あの老人を城へ送り込んだのです。
王様たちはミズラの計略に引っ掛かって、鸛になってしまったというわけです。
『王様、これからどうしましょう?』
『とりあえず隠れよう。そして今後のことを考えるのだ』
王様と大臣は空へ飛び立ちました。
崩れた柱や壁… どうやら昔は立派な城だったようです。
王様と大臣は廃墟に舞い降りました。おや? どこからか声が…
『誰かが泣いているような… 行ってみようか』
『王様、およしなさいまし』
大臣は止めましたが、王様は声の聞こえる方へ近づいていきます。
王様は梟に優しく声を掛けました。
『梟さん、何を嘆いていらっしゃるのかね?』
『あら? 鸛さん、こんな所に何の用が?』
『いやいや、こう見えても我々は人間なのです』
王様は今までのことを梟に話しました。話を聞いた梟は言います。
『ある日、一人の魔法使いがやってきました。
この城の一人娘である私に、『ミズラと結婚しろ』と言うのです。
私が断ると、魔法使いは父を殺しました。
そして私も梟に変えられてしまったのです』
『許せん!』
しかし、鶴の姿のままでは、どうすることもできません。
王様は元の姿に戻って、ミズラを懲らしめることができるでしょうか?
世界に伝わる童話だけのことはあります。楽しく読むことができました。
他の収録作品も熟読したいですが、なかなか時間が…












