よく晴れた土曜日の昼下がり。
みなとみらいの港が一望できるオフィスの休憩室で、カレーに関する文章を編もうと、
もう絶版になったエスビー食品が企画し世界文化社から出版された本を、
座り心地の良い一人がけソファーに深く身体ごと沈め込み、
読んでいるようで読んでいない、ぼんやりと眺めていた。
 
「うぃーっす」と小さな声で私に挨拶をし、隣のソファーに腰掛けてサブウェイから買ってきた何だかわからないサンドを美味しそうに頬張るまきこちゃん。
 
とろ〜んとした穏やかな時が流れる。
 
二人とも、なんだかんだオーバーワーク気味で、
頭と身体、特に脹ら脛から下がパンパンになっている。
 
「気持ちいい〜〜〜〜」
 
と、何度も二人して伸びをする。
 
「な〜んもしない、
な〜んも考えない、
至福の時間=『瞑想』
大事だね」というと、
 
まきこちゃんが、いきなりバッグから編みかけのレッグウォーマーを出し仕上げに取り掛かり始めた。
 
「私の瞑想はコレかな?」
 
えーーーーーーー、だって編み目の順番とかよく見てないと、飛ばしちゃったり大変じゃない?
瞑想どころじゃないじゃないと言い掛けて、
「野暮だな」と気づいて口をつぐんだ。
 
まきこちゃんはプロのニッターなのだった。
 
手編みの作品は、一つ一つに非常に手間と時間がかかるので、大量生産ができない。
 
たくさんの注文取ると、本当に自分の時間が取れず、その分雑になるし、良い仕上がりができないのだという。
 
「心に余白がなくなっちゃってクリエイティビティーが薄れてしまうっていうんですかね〜」
編み目が均一にならないし、グラデーションのかかっている糸を使う時などは、全体のイメージが崩れてしまう。
 
「とにかく納得いく作品が作れないから、そんなの売りたくなくなっちゃうんです。」

 
私は、編み物の世界に疎いけど、なんとなくまきこちゃんの言いたいことはわかる。
 
物作りをする人たちは、テキトーに仕事することができない。
 
まきこちゃんも私も、それぞれ仕事を持ち、家庭もあり、子育てもする。
 
自分の時間を持つことがどれだけ大変な事なのか。
 
そんなことを考えながら、帰りの電車の中で見つけたブログ。
時を同じくして、師匠が出版された本。
 
 
まきこちゃんが持ってた優れものによく似ているグッズと、オススメの映画。
 

 

 

元編集者の私が、非常に感動した本。

 

 

 


ところで、そのレッグウォーマは売らないの?と聞くと、

 

「コレは自分へのご褒美だから売らな〜〜〜〜い」
 
と。
 
すっごく欲しい。