●「将棋のまち」の先輩、山形県天童市を視察してきました。
天童市は、もともと将棋の駒の生産地として全国的な知名度を誇っていたものの、少子高齢化や娯楽の多様化などにより、将棋人口の減少や駒の生産量の大幅な減少を目の当たりにし、改めて将棋普及の取り組みに力を入れて取り組んだそうです。
将棋普及の具体的な取組
・プロのタイトル戦やアマチュア棋戦の誘致
・人間将棋をはじめとした、将棋にちなんだイベントの開催
・将棋にちなんだモニュメントの設置
・日本で唯一の将棋資料館の設置
・誰もが無料で気軽に利用できる将棋交流室の設置
・小中学生向けの将棋教室の開催
・漫画やアニメとのコラボ等による、新たなファン層の掘り起こし
・ふるさと納税を通した、業界の現状説明と支援の呼びかけ
・プロ棋士育成教室
●取組の成果
様々な施策を展開することにより、将棋のまち天童を市内外に強く発信することに成功。特に、一時落ち込んでいた将棋駒の生産額については、ふるさと納税の支援使途として多くの賛同があり、2015(平成27)年には3億120万円に達するなど、V字回復を成し遂げました。
地道な取組の結果、市内外から「天童=将棋」のイメージが定着することとなりますが、その象徴的な成果のひとつが藤井聡太竜王の人間将棋への出演です。令和4年2月、天童市長が上京して直接お願いし、出演の内諾をいただいたとのことでした。
新型コロナウイルス感染症の拡大で2年連続で中止となっていたこともあり、「人間将棋が3年ぶりに開催」「あの藤井竜王が出演」と、マスコミの注目度は非常に高く、藤井竜王が出演した当日は33社が取材に訪れ、イベントの様子はおよそ一週間にわたってテレビや新聞、週刊誌等で紹介され、計り知れない経済効果をもたらしました。
藤井竜王を迎えての人間将棋の成功は、改めて「将棋のまち天童」を全国にアピールするだけでなく、新型コロナで苦しい経営状況にある県内外の観光産業等を元気づけ、また将棋界にとっても明るいニュースとなりました。
●視察を終えて
全国的に「将棋のまち」として高い認知度を誇る天童市においても、一時は市民の将棋離れに危機を感じたというお話が印象的でした。しかしながら、天童市は将棋の駒の生産地として自他ともに認める「将棋のまち」であり、将棋振興施策を展開しやすい環境にあったのではないかと考えられます。
一方、本市は、関西将棋会館の移転が決定しているものの、「将棋のまち」が市民に広く浸透しているわけではなく、天童市の取組を参考にしながら、覚悟を持って粘り強い取組をしていかなければならないと感じています。
担当してくださった職員さんに、本市の将棋振興の取組に対するアドバイスを求めたところ、「将棋会館があるだけでは将棋のまちとはならない。将棋の全国大会を開催するなど市外にも広く発信しながら、漫画やアニメなどの活用により、新たなファンを作ることが必要ではないか」と具体的な提言をいただくことができました。
今回の視察では、通り一遍の事業説明だけでなく、ざっくばらんな意見を交わすことができ、今後将棋のまちを進めていくうえで、有益な関係を築くことができたのではないかと思います。
将棋むら天童タワー
山本信治天童市長にもご挨拶をいただきました。
ひと目で将棋のまちとわかる郵便ぽすと
路面の詰将棋。街中に将棋が溢れています。



