第二十六回映画と音楽のレビュー~リップヴァンインクルの花嫁~ | novel2017のブログ

これぞ邦画って感じの映画なのは、やっぱり岩井俊二監督作品だからか。よくサブカルなんてイメージを持たれたりするが、まあやはりそれだけ"唯一無二の世界観"とビジネスにおいて成功しているから。やはりいいものはいい。細かな描写と日本人独特の間。多くを伝えないこと。


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この映画は「嘘」がテーマになっている。でも決してその嘘は誰かを不幸にしようとたくらむ嘘ではない。彼氏の愚痴や新婚についての悩みを本音で語りたい主人公。それを何でも屋と称して名前から本心から全てうそだらけのアムロ。主人公と同居する女優の真白。

この映画を滔々と語るのには無理がある。それは3時間あるから。ちょうど1時間半を境に大きく話は変わっていく。別のストーリを二つつなげたような構成。いつもなら、主人公の長き人生の一瞬を2時間でまとめて終わるのだが、この映画はその続きを描いてくれている。ああ、そんな大事件の後の主人公たちってこう生きていくのか、そんな発見を与えてくれた。

岩井俊二は大声では言いにくいが大好きなクリエイターだ(サブカルと揶揄されがち~)。ミュージックビデオも短編映像も機会があれば見る。彼の良さは審美眼というか、先見の明というか、めちゃめちゃ適役を持ってくるところ。この映画でも主人公の黒木華がとてもよかった。黒木華だなあって。先生やりながら生徒にばれないようにコンビニでこっそり変装してバイトして、声小さくて友人いなくてでも結婚して。設定の細かさは感情移入のきっかけになるけど、なんだか哀れに思えてしまう。

基本、映画は完結してほしいタイプだ。映画でみせきれなかったものを「本当はこんなサイドストーリーあるんですよーこれみてはじめて完結ですよー」と本編とは別に公開したりするのは嫌い。なんか後出しジャンケンみたいで。初めから映画に詰め込んでおけよと。無理なら諦めて後からごちゃごちゃいうんじゃねえって。この映画にもアナザーストーリーというか別視点の映像が6話公開されている。1話は無料だが残り5話はお金がかかる。もちろんダメではないし無料がありがたいことくらいわかっている。にしても姑息だ。これは好かん。戦略だろうが金儲けだろうが関係ない。ちょっと残念だなあ。そこは。

 

 

 

結論、長いので1時間半ずつ2回に分けて観るといい。前半部分を多少忘れても支障はないので。そしておもしろい。クラシックを多用したBGMで、主人公の一人(真白)をCoccoが演じており、劇中での一瞬の歌唱シーンは要注目。さすがだ。ちなみにあとそのシーンにちょろっとRADWIMPSの野田洋次郎が出演している。シーン後半での大事な場面で、この作品を遺作にして亡くなられたりりィも熱演している。

ぜひ時間のある人はみてほしい。