2013年てるてる大賞受賞作品
「四十九日のレシピ」
妻の乙美(執行佐智子)さんの突然の死。
熱田良平(石橋蓮司)さんは妻の遺影とお骨を前に茫然自失の日々を送っていました。
良平さんは釣りに出掛ける朝、お弁当にソースが染みているのを見て「要らん!」と怒鳴りつけて出ていったその日に乙美さんが急逝してしまったのでした。
そんなところに、元気よく入ってきた若いゴスロリ娘、「臭い臭い!」と言いながら部屋の窓を開け放ちます。あっけにとられる良平さんを尻目に、娘はズカズカと乙美さんの部屋に行き、本棚から冊子を「これこれ!」と言って取り出します。
それは手作りの「暮らしのレシピ」。そのレシピには、料理や掃除など生活するために必要な事柄がイラスト入りで書かれていました。
娘は井本(二階堂ふみ)、「イモと呼んで♪」と名乗りました。イモちゃんが語るに、彼女は「依存症」の少女たちの更生施設「リボンハウス」でボランティア活動をしていた乙美さんから話しかけられ、四十九日までダーリン(夫)の面倒をみてほしいと依頼されたとのこと。
「暮らしのレシピ」のなかにある「四十九日のレシピ」には、「みんなで楽しく呑んで食べて大宴会」とだけしか書かれていませんでした。
「四十九日って何?」
「死んだ人間があの世にいく日だ」
「じゃあ大宴会やろうよ♪」
「四十九日なんてやらない!」
一方、一人娘の高岩百合子(永作博美)さんは、ある決断をしていました。
百合子さんは夫の浩之(原田泰造)さんと義母と3人暮らし。義母の介護に追われていますが、悩みは子供ができないこと。不妊治療に励んでいる最中に夫の愛人から「浩之の子供がいる、早く離婚して」との電話が・・・。優しいが優柔不断な夫に、離婚届と指輪を残して、百合子さんは実家に帰ることにしたのでした。
でも、百合子さんの乙美さんとの思い出は、小さい頃父親(中野英樹)と知らない女のひと(荻野友里)と3人で行った動物園。新しいお母さんと呼ばれた乙美さんが作ってきたお重のお弁当を払いのけてしまった・・・。
複雑な気持ちで良平さんの家に着き、敷居の高い実家の前で佇んでいた百合子さんは、お風呂で若い娘に背中を流してもらっていた父親の姿に激昂します。
イモちゃんから事情を聞いた百合子さんですが、今度は父親からなぜ帰ってきたのか責められます。
「怒んないでよ、説明できないじゃない!」
「怒ってない、声が大きいだけだ!」
そこに、イモちゃんがレシピに書かれたラーメンを運んでくる。バターをたっぷり入れるそのラーメン、乙美さんのラーメンを父娘ですする。
イモちゃんに慣れ、レシピに導かれて生活のリズムを取り戻していく良平さんに対し、体調もすぐれず落ち込み気味の百合子さん。良平さんの姉の珠子(淡路恵子)叔母さんにも辛辣に説教されて凹みます。
百合子夫婦の破綻を知った良平さんは、「やるぞ、四十九日の大宴会!」と宣言します。
でも、大宴会ってどうやるの?
助っ人としてイモちゃんに呼ばれたのは、ブラジル日系3世のハル(岡田将生)君。彼は乙美さんがパートで働いていた自動車工場の青年。「ウドの大木」とか呼ばれ、いじめられて引きこもりになっていた彼を励ましてきたのが乙美さんだったのです。
ハル君は家の改装に頑張るとともに、百合子さんに笑顔を取り戻してあげます。
でも、乙美さんの四十九日に何をしようか?
「リボンハウス」を卒業していく娘たちに「あしあと帳」を作り手渡してきた乙美さんでしたが、渡せなかった1冊が。
ひとにはたくさん作ったのに、出来なかった「自分史」。ならば、わたしたちが作ろう!
百合子さんは年表作りを提案し、70年間の大きな年表を作りますが、小さい頃空襲で乙美さんと祖父を除いて家族が全滅し、祖父の世話に追われ世間に出ることもなかった乙美さんの年表はあまりに大きな空白が・・・。
かくして、四十九日の大宴会の当日を迎えたのでありましたが・・・。
乙美さんが遺した「暮らしのレシピ」は、良平さんと百合子さんへの「人生のレシピ(処方箋)」でもありました。
ふたりのことを何でも知っているイモちゃんは乙美さんの生まれ変わり?!
今度は百合子の番だと言うハル君。
もうもう、涙ぐしぐしの素晴らしい作品でした。
