先日は、


僕が、いま嫌いな言葉、ワード3を
コメントに頂き過剰に反応してしまい
すみませんでした。

『お金持ち』

『裕福』

『優雅』


いつも何が基準で、その人達は僕にそう言う言葉を掛けて下さるのか自分にはわかりません


先日も歌舞伎座前の「辨松」さんが閉まる前に
自転車で買いに行きマスク姿の僕に気付いて声を掛けて下さった方がいらっしゃるのですが
会話の中で『いや〜僕らも舞台が開かないので収入が断たれて大変ですよ〜』と言うと 

その方は、

『歌舞伎役者さんはお金持ちなんだから大丈夫ですよ』

と返されてもう何もそれ以上は喋れませんでした当時既に赤字生活でしたし、、、

確かにブログをご覧頂けている皆様より
収入はある?と思います
しかし貰った分がそのまま自分達の生活に使えるわけではありません、その中からスタッフの賃金や身の回りの和装やら化粧道具など
例えば紋付き袴等は傷めば作り直さなければなりませんし、稽古着、楽屋着、新規や洗い張りを
入れればそれだけで年間数百万かかります
又使い方によっては一生涯使える楽屋での
鏡台、これも数百万かかります
国産の自動車が買える値段ですね

今このコロナウィルスで業界が動けない状態になり三ヶ月間無収入になりましたが、
それでもスタッフは守りたいですし
他の歌舞伎役者さん達に問い合わせても
付人さんと番頭さんへは少なからずも支払い補助を続けていると聞いています。

昔の歌舞伎役者さんなら
23区内にお屋敷も買えたでしょう
今の我々の世代でも歌舞伎専業の役者には
一軒家購入は無理です、マンションで言う
億ションは買えません
芸能界  と言うフレーズ
我々は芸能界と言う枠に入るのでしょうか?
入るとしたらとても広い枠組みですよね
テレビで活躍の
お笑い芸人さん、タレントさん、俳優さん
我々のごしんしょうはマンション購入事情でご理解頂けたと思うのですが、そこそこお名前が売れていらっしゃるお笑いの方達の方が我々より
裕福な生活をしていらっしゃいます。

彼らはゼロからスタートし沢山の人の中から選ばれたひいでた人達です、

我々は幹部役者の80名?位は
何かしらの血筋や縁でこの世界へ入り
小さい時から一丁前に着物を着せてもらい
山程のお稽古事をこなしてやっとで舞台に上がらせていただいています、この一人前以前の舞台に立つ迄に大変な労力や金額の投資が必要です
そこへプラス学費諸々になりますので、、、、
若手の幹部歌舞伎役者が自分の御給金だけでやって行けるようになるのは30才くらいでしょうか?それ迄は親が何かしらの補助をしないと
舞台に立ち続ける事は難しいです。

確かに昔の歌舞伎役者の家は裕福でした
その名残で名家のお家ですと別荘をお持ちの方もいらっしゃいます。
私の家も父の代で15代目
祖父の13代目は僕が物心付いた時には
京都にお屋敷を構えておくらもありました、
僕が小さい時、祖父母に
「ねぇねぇお祖父ちゃん、うちの家も古いお家だから代々の宝物とかあるの?」
と聞きましたら 

「昔ね、売っちゃったからないんだよ」

と言っていました。
と言いますのも父の兄妹は八人
戦後の混乱の時期も食べ盛りの子供達が沢山
確かに大変でしたでしょう
そこへ追い討ちを掛けるように関西での歌舞伎興行から松竹さんが撤退され
残された歌舞伎役者を集めて
『仁左衛門歌舞伎』と言う名前で
自費公演を始めたものですから、そりゃあ
おくらがあっても鎧や刀等、家宝と呼ばれる物は
確かに無かったでしょう

しかし
お金や物が無くても
歌舞伎を愛する祖父母と子供達の心は優雅だったと思います。

嫌いな言葉の最後の 
「優雅」
これは自分がその境地にまだ入れないから
嫌いなんです。


さて何を持って「お金持ち」「裕福」「優雅」
と仰るのでしょうか……

難しいですね
因みに無収入になった幹部役者のほとんどが
このコロナウィルス騒動になり
銀行さん金融公庫(国庫金)の融資を受けに行っております。
お陰様で他のフリーランスの俳優業の方達よりも
審査基準は歌舞伎と言うだけで優遇して頂いている様です、

例え無収入であっても
私は歌舞伎役者として誇りを持って
生き、棺桶に入るつもりです。

しかし
歌舞伎を続ける為には
今はなりふりかまわず収入源は探します
スタッフの為にも自分の為にも(笑)


後もう一つ
よく皆さんに

『歌舞伎役者さんってお休みでも国からお金貰ってるんでしょ』

『補償されてるんでしょ』

と言われます。

国、文化庁のお仕事などで雇って頂く事はありますが、
役者が直接お国から補償や優遇等は受けてはいません

ドイツ等は今回のコロナウィルスの経済状況で
1200億円が芸術関連への支援とフリーランスの支援を表明しています。

勿論日本も支援策を出していますが
今後の企画や営業機関の援助であって
フリーランスの生活保護の項目はありません

他の先進国は、
普段からオペラやバレー、オーケストラ等へ
国からの支援があります、
「ジャパニーズ・オペラ」とも言われる歌舞伎は松竹株式会社と言う民間企業一社で守って来ましたが流石にこのコロナウィルスの経済状況では
今迄の様に歌舞伎全体を民間企業一社で守る事は
難しいのが現状です。

私の記事、ブログを覗いてくださる皆様は
「歌舞伎」
ってこの世界、日本の経済状況からみて
消えてしまってもしょうがない物なのでしょうか?


もし残そうとした時
今後も民間企業一社だけに頼って残せる物だと
お考えでしょうか?

僕の意見としては
歌舞伎産業はもとより日本で古来の職人と言われる方達が携わる文化産業を今回のコロナウィルス騒動で改めて見直し、財界なのか国なのか
何かしらの長期的な支援策を考えなければ日本の文化は確実に消えてしまいます、既に大手三味線製造が最近消滅してしまいました、
職人技、職人芸は、一度失うと建て直せません
 AIでは補えない分野なので
いち早く支援策や支援の輪が広まる事を
祈っています。


長文で御免なさい


改めて118名のコメントを下さった方へ感謝です。