Anime 207 - 解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ | 午前零時零分零秒に発信するアンチ文学

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時事問題から思想哲学に至るまで、世間という名の幻想に隠れた真実に迫る事を目的とする!

■概要

 

「解雇ですか……?」魔族で魔法が使えない無能といわれ、突然の解雇宣告を告げられた魔王軍の暗黒兵士・ダリエル(30代)。故郷を追放され、偶然、森で助けた村娘・マリーカとの出会いにより、人間族のラクス村に流れ着く。魔族ではパスできないはずの冒険者登録に受かってしまい、手のひらには人間族にしか使えないはずのオーラが宿る!?駆け出し冒険者ダリエルとして、のんびりできないドタバタなセカンドライフがいま始まる。 © 岡沢六十四・るれくちぇ・講談社/解雇された暗黒兵士製作委員会

 

 

使ない奴とダメだしされて職を失ったが

実は、有能だった。

簡単にいえば、本作はそんな男の話である。

 

「なぁ~んだ。全然面白く無さそうじゃねえの」と思っていたが、

実際に観てみると、やはりコレといって面白い話は無かった。

そもそも、あの「解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ」ってセンスの欠片もないタイトルを誰がつけたんだか。このアニメ、タイトルだけで、損をしていると思ったね。

 

でも、筆者が最後まで観てしまったのは、

主人公・ダリエルの声優が杉田智和さんだったからだ。

坂田銀時やジョセフ・ジョースターなどクセの強いキャラクターを演じることが多い杉田さんだけど、今回に限っては、温厚で真面目な男を演じている。

 

■プロローグ

 

第1話から、幾つかの分岐点がある。

 

本作は、二つに分断された領土で「魔族」と「人間族」が対立した世界。

まずは、ここを押さえておく必要がある。

見た目は、魔族も人間族も同じく人型なのだが、違いといえば、魔法が使えるかどうかでしかない。魔法を使えない人間は、その足らない分を武器を作ったりして補っていった。一方で魔族は、魔王という絶対者が統治する王国にある。

 

さて、ダリエルはといえば、魔族側の兵士だった。

しかし、彼は魔法が使えない。だから、人一倍、国の為に尽くした。

だからダリエルを評価する上官や仲間は多く、それなりに信頼もあったのだが

やはり「魔法が使えない下等魔族」という理由で、彼の活躍を面白くないと

思っていた者も一部いた。で、その者が権力の座に座った途端、解雇された。

 

それまでは、王室のベッドで過ごせていたのだが、解雇された途端に文無しになる。何日も彷徨った挙句に、人間族の辺境・ラクス村というところに着いた。

既に、体力は残されておらず、ダリエルはその芝生に倒れてしまった。

 

その生と死の狭間に置かれていた頃、大猿の魔物に襲われていた若い女性がいたのでダリエルは何とか最後の力を振り絞る。魔法が使えないので、どうやって戦って良いのか解らなかったが、咄嗟的に人間の戦い方を真似て、女性が落としていた武器(ダガー)を拾って使用。何とか退治した。

 

一方で、女性のほうは、これまで人から頼られることは多くあっても、人から助けて貰ったことはなかったという。彼女にとってダリエルは、それはまるで伝説の勇者のように映り、早くも興味の対象になった。女性の名はマリーカ。

 

マリーカは、命を助けて貰ったお礼をしたいからという理由でダリエルを無理やり家に連れていった。どうやら、父親のエンビルは村長で、この小さなエリア限定のギルドマスターも兼任しているらしい。

 

食事の世話をして貰い、すっかりと体力を取り戻したダリエルだったが、意外なことにエンビルにも気に入られてしまった。ガタイが良かったからだ。

 

そこで「是非ともウチでギルド登録して冒険者として働いてみないか」と提案(というか、これも無理やり強制的に登録)された。手の甲にランクを示した刻印が現れた。この際に、ダリエルが実は魔族ではなく、人間であることが判る。どうりで魔法が使えなかった訳だ。

 

エンビルはダリエルが冒険者として、どれだけの適正があるのかテストした。

驚くことにダリエルは全ての属性、全ての武器が扱える規格外の力を持っていた。

 

「君のような人間が、こんな寂れていく村に居る必要はない。

どうだろうか、ダリエル君。センターギルドへ行ってみないか?」

 

ここが最初の選択肢になる。

1) センターギルドへ行く

2) ラクス村に残る

 

寂しそうな顔をするのは、そばにいたマリーカだ。

この時、彼女の気持ちは既にダリエルに傾いていたからだ。

 

ダリエル、2を選択。

仕事を解雇され、路頭に迷い、途方に暮れていた時、助けて貰った恩義がある。

ずっとラクス村で働くことを選んだ訳だ。

 

■序盤

 

新たな地で冒険者としての第一歩を進んだダリエルだったが、

早くも障害がやってくる。同じ冒険者のガシタだ。

 

若いながらも自分が村で唯一の冒険者であることに誇りを持っているが故に

「どこからやってきたのか判らない得たいの知れないオッサンなんて受け容れられるか?」って感じである。「しかも、俺はDランクで、奴はEランクじゃないか」

 

だが、この障害は簡単に解決する。

 

本来なら、他所のギルドで扱うはずの危険な魔物の情報を書いた依頼書をガシタがこっそりと盗み見て、討伐に行ってしまったからだ。それだけなら、まだ許せるのだが、他所様のギルドのエリアに入ってしまう恐れがあったからだ。当然ながら、Dランクのガシタでは手に負える魔物でもなかった。

 

これに怒っていたのはマリーカで、父親がだらしないからだとエンビルを責める。「村長とギルドマスターと兼任していると色々大変なんだよ」と言い訳をする父親だったが。。。

 

ここでまた選択肢

1) ガシタを1人で助けに行き、連れ帰る。

2) マリーカを連れて助けに行く。

(実はマリーカも冒険者として優秀)

 

ダリエル、1を選択。

マリーカは一緒に行けない代わりに、毒消しの薬を渡す。

問題の魔物が毒を持っていると知っていたからだ。

 

ダリエル、苦闘の末、魔物がガシタを救い出し、討伐。

毒にやられたガシタをマリーカの薬で治療。

 

命を救ってくれた恩人を嫌う冒険者なんていない。

ガシタはダリエルを恩人として慕うようになる。

「アニキぃ~」一度、打ち解けると暑苦しいほど人懐っこい奴だった。

 

■ミスリル鉱山

 

ここが物語の重要な起点である。

 

ラクス村が寂れていったのは、嘗て宿場町として栄えていた村を支えていたミスリル鉱山を魔族に奪われたからだった。村長であるエンビルは、もはや、このまま黙って村が滅んでいくのを待つしかないと悲観。

 

ミスリルとは特殊な金属で、武器として加工すれば類まれない性能を出す。人間も魔族も、ミスリルの争奪により戦局の優位不利が決まると言ってよい。

 

そこで、ダリエルは考える。

「鉱山へ行き、支配している魔族側の者にミスリルの横流しを持ちかける。

もしも、これが可能になったら、ラクス村も少しは潤う」と。

実は、ミスリル鉱山は、ダリエルが魔族時代に働いていた職場だった。

しかし、今のダリエルは人間族側の冒険者だ。命の保障もない。

 

ミスリル鉱山へ入っていくと、嘗ての部下、ノッカー達がいた。

ダリエルと再会できた事を皆喜んだ。

 

ダリエルが解雇された後のミスリル鉱山は、それは酷いものだった。

ノッカー達に発掘したミスリル鉱石を4倍増しで魔族に上納させていたのだ。

これは強制労働と言ってよい。

 

そこに、また魔族側の指揮官がやってくる。

「モオ、ガマンナラネエダ」怒りを通り越したノッカーが反乱する。

「このクズ共め」指揮官が部下の兵士たちへノッカーを皆殺しにしろと命令。

このどうにもならない状況、ダリエルはどうする?

 

そこでまた選択肢

1) ノッカーに味方し、魔族側に敵対する

2) ノッカーの味方はしないが、指揮官と魔族の兵士たちを止める

 

これは、重要な分岐点になる。

選択を誤ると取返しがつかない事になる。

 

ダリエル、2を選択。

彼にとって魔族とは自分を育ててくれた場所であり、人間族とは住む場所を失った自分を受け容れてくれた場所だった。どちらも大切だったのだ。

 

争ってほしくない。

 

「魔王軍の兵士たちよ、誇りを忘れたか? 知っているはずだ。非戦闘員を1人でも殺せば、それはただの殺人ということを」

 

ダリエルは、持ち前の戦闘力で魔族の兵士たちを止めた。

指揮官も、口ほどにもないくらいに弱い奴だった。

これにより、誰一人とて血を流すことなく、ミスリル鉱山を取り返した。

 

残されたノッカー達をラクス村で引き取り、人間達に加工などの技術供与をしてもらうことにした。こうして、村は元気を取り戻した。

 

一方で、鉱山を奪われた魔族としては、危機感を募らせる。

魔王の命で「あの優秀な補佐官、ダリエルを連れ戻せ」と。

 

ダリエルの元に現れたのは、魔族時代に同僚だった青年リゼートだった。

リゼートはダリエルとの再会に喜ぶのも束の間、実は人間だった事も知った。

多少は驚いたかも知れないが、リゼートが敵意を抱くことはなかった。

それはいいとして、彼が来た目的はミスリルを魔族側に取返す為。

 

もうひとつは、ダリエルを魔王軍に戻るように説得する為だった。

さもなければ、力づくでも…。

 

難なくリゼートを退けたダリエルは、交渉を持ちかける。

「ミスリル買わないか?」通常の4倍のレートで。

魔王軍にとってミスリルは政局を左右する重要な鉱石。

絶対に買うという公算がダリエルにあったからだ。

 

勿論、それを快く思わない人間もいた。

魔族と交渉するなんて、彼らは我々の敵だ。殲滅すべきなのだ。と。

しかし、ダリエルは…

 

「ミスリルの為に、互いに血を流す。

こんな馬鹿げたことは終わらせるのだ」

 

もうひとつ、大きな分岐点がある。

 

第6話だ。

 

ダリエルの将来を左右する選択がある。

 

彼が、ラクス村を生き返らせた事がセンターギルドから評価されたのだ。そこで、正式にセンターギルドへ来て働いてくれないかというものだった。

 

1) センターギルドへ行く。

2) ラクス村に残る。

 

ダリエル、2を選択。

これには、とある伏線がある。

 

実はダリエルの頭ん中では、十中八九、センターギルドへ行こうと決めていたのだ。サウナの中で考えていた。まだ、自分には知らない世界がたくさんある。それを知るためにも…と。しかし、その隣には既に。。。

この隣にいた人とのやりとりによって、2を選択したのだった。

 

翌朝、エンビルに呼び止められ。。。

「私の後任として、村長をやってほしい」と。

説得されたダリエルは、快く引き受けることにした。

 

ダリエルはラクス村の新しい村長として第二の人生が始まったのだ。

「代わりに、私からも。マリーカさんと結婚させてください」

 

これからは一人ではない。

三人だ。マリーカのお腹にもう一人…。

 

そして、1年が経過した…

 

ここからは、魔族と人間族とが互いに血を流すことがない平和への戦い。

観てからのお楽しみってところで…