生きづらさについて考える 内田樹 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

内田樹さんがあちらこちらに寄せた文章を集めてまとめた1冊。

 

元はばらばらのテーマなのに

これだけの量をまとめると

ひとつの統一感が出てくる。

 

それは暗さ。

 

あとがきで内田さん自身が書いているように

時事問題や政治問題を扱うと暗くなっている。

 

内田さんを

左寄り

みたいに受け止めているひとも多いような気がするけれど

ぼくは極めてニュートラルなひとだと思っている。

 

いうなれば自由自在流。

 

内田さんは道場を開いているけれど

そこでやっているように

筋肉や関節のちょうどいい場所を見つけて

次にどのような動きも開始することができるのが

もっとも安定した姿勢らしい。

 

そういうのってかっこいいと思うし

それは身体的な姿勢だけじゃなくって

精神的な姿勢もそうでありたいと思う。

 

優秀な頭脳を持っているひとは

それを自分のためにではなくて

世の中のためにつかってほしい

ってそう思うよね。

 

優秀な頭脳に限らず

自分の持っている能力を

自分のために使って何が悪い

っていう考え方が主流になり過ぎている気がする。

 

そういうのも社会を生きづらく感じさせる要素になっているんじゃないかな。

 

敗戦により戦争を生き延びた時代の空気は

貧しいけれども活気に満ちていて

とにかく戦争はもうこりごりという強い意識のなか

戦争を回避するためには

他国に無茶を求められても甘んじて受け入れる

みたいなところがリアリティを持っていたが

戦争を生き延びられて心底ほっとした

という経験がないひとが大多数になったころから

この息苦しさが始まって

それが

子どもを産まない選択に結び付いているのではないか

っていうのも

たしかにそうかもしれないと感じた。

 

共感できる考え方が文章のあちらこちらに散らばっていた。

 

だから内田さんの本は読みたくなるんだよね。

 

ぼく自身はいまわりと恵まれた環境にいるけれど

現代のこの不公平な社会にたまたまうまく適応できているだけ

という自覚は持っていて

自分の恵まれた環境を素朴に楽しむことができなくて

社会の息苦しさを思って自分まで息苦しさを感じることが多くって

これって欺瞞だな

とは思うけれども

すっきりしない日々が続いている。

 

こんなんじゃだめなんだけどね。

 

貧乏と貧乏くささは違う

っていうのはひとつのヒントになるような気がする。

 

 

 

 

 

--生きづらさについて考える--

内田樹