むらさきのスカートの女 今村夏子 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

他の誰の作品とも似ていない独特の世界観で

気づけばあっという間に読み終えていた。

 

今村夏子さんは

「こちらあみ子」

で出合って以来追いかけているが

これまたすごい作品を生み出した。

 

小説のたくらみが心地よい。

 

こういうたくらみこそ

小説が小説であり

他のいかなる表現とも異なる

存在理由だと思う。

 

時代の潮流を無視しているようにも感じる独特さであるが

同時に時代や国境を超えた普遍性を感じさせる。

 

語り手の不穏さ。

 

不気味さっていうのとはちょっと違う。

 

登場人物たちのありふれた振る舞いのなかの醜さ。

 

誰がおかしいって全員おかしい。

 

でもそれって

このひとたちはおかしい

と思っているぼく自身のおかしさにつながっている。

 

主な舞台となるのが

ホテルの客室清掃スタッフという設定なのが絶妙だと思う。

 

もちろん現実にこんな会社があったら

いまの世の中ではただちにつぶれるだろうけど。

 

他人に対する視線のいびつさ。

 

自分の言動や思考に対する無頓着さ。

 

こわいものみたさ

みたいな感覚で読んでいる自分。

 

ものすごい事件や暴力ではないけれど

社会にありふれている醜さ。

 

その存在に関与せず気づかないまま生きていくことはできてしまうけれど

ぼくは気づいてしまうし

むしろほかのひとたちにも気づかせたいと思っているから

それを描き出しているこの作品に共感する。

 

 

 

 

 

--むらさきのスカートの女--

今村夏子