たぶん初めて読む松浦理英子さんの作品。
序盤は
女子高校生の話かあ
べつに女子高校生の感性や日常に興味なんてないんだけどなあ
って感じであんまり期待せずに読み始めたのだが
途中で
これはなかなかすごいかも
って思った。
感情の機微の表現が
これまでぼくが抱いたことのないようなものだったからだ。
ああこういうふうな感じ方があるのか
って感じ。
もちろんフィクションなので
実際にある感じ方なのかどうかはわからないし
現実の女子高校生の感覚からみてどうなのかもわからない。
でもすごく説得力があるような気がした。
もしも現実の女子高校生が
あんなふうに自分の身の回りの世界のことを感じているとしたら
それはとてもゆたかなことで
ぼくが男子高校生だったころには想像もつかないことだ。
こりゃあ男子が女子と対等に会話できるはずがない。
いやもしかしたら
男子高校生は男子高校生なりに
女子高校生には感じ取れない世界を感じていたのかもしれないけど。
中心的な登場人物である3人
日夏、真汐、空穂
が構成する”わたしたちのファミリー”と
彼女らをとりまくクラスメートたちの話なんだけど
わたしたちの想像
っていう前提で登場人物たちが他の登場人物を語る描き方が
いい具合に小説世界を重層的にしていて
絶妙だった。
現実の世界も自分の想像でしかないのだからね。
それにしても
わたしたち
っていう主語はいったいだれなんだろう。
特定のだれかではなく
”わたしたちのファミリー”
をとりまくクラスメートの集合意識とか
妄想のすり合わせの結果だと思って読んでいたけどね。
ストーリーもよかったのだが
ひとつひとつの感情の描写がおもしろかったので
文章そのものをたのしむことができる作品だと思う。
最初から最後まで慎重で抑制のきいた文章に理性を感じた。
ところで
美織の両親みたいなのって
あんな感じ
鼻につく部分もあるけど
やっぱり好きだな。
--最愛の子ども--
松浦理英子