ひる(14) | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

  あいにくだが今日は先に座らせてもらっているよと後ろを振り返りもせず心のなかで思う。

 まあ、がらがらの車内だからどこでも空いている席に座ればいいじゃないかとも思う。

 しかし男たちはこの特等席の背後に立ったまま会話を続けた。

「それにしてもこの箱は掘り出し物だったな。あんなところで価値のわからない素人に保管されていたんじゃ人類にとって重大な損失だからな」

「そう言うな。前の所有者がこれの価値を知らなかったおかげで破格の安さで手に入れることができたんだから」

「そうだな。この箱はわが組織にとってはイコンだからな」

「さらにキーにもなっている。これで、わが組織の目的は実現に一歩近づいたということだ」

 組織? イコン? キー? 聞き耳を立てる。

「コーネルのカシオペア#1がまさかあんなところにあったとはな」

「国立の美術館で盗難に遭ったと聞いて探していた甲斐があったというものだ」

 コーネルのカシオペア#1だって? ということは彼らの組織は。

「とにかくひとまずこの箱を支部に持ち帰ろう。きっと支部長から努力を称えるお褒めのことばがいただけるだろう。もしかしたら本部からお呼びがかかるかもしれない」

「そうだな。しかし我々はすぐに次の仕事にとりかからなければならないぞ」

「もちろんだ。我々には世の中の不公平を正し、公平な世界をつくるという使命があるのだからな」