ずいぶんとひさしぶりに読み返した。
ミヒャエル・エンデの
モモ。
この
モモ
と
サン=テグジュペリの
星の王子さま
と
アーネスト・ヘミングウェイの
老人と海。
この3冊で
ぼくはしあわせとはなにかについて知った。
ひさしぶりに
モモ
を読み返してみて
やはりここにはほんとうのことがたくさん詰まっているな
とあらためて確認することができた。
メルヘンとファンタジーと冒険と
そして社会風刺。
絶妙のバランスでこれらがブレンドされている。
わくわくどきどきしながらたのしくページをめくっていくうちに
自然に自分のなかに浸み込んでいるある価値観に気づく。
ぼくはこの作品に出会ってから
便利なものをつかって時間を節約してもいいこと
と
不便でもじっくり時間をかけてやるべきこと
を見分ける習慣がついた。
そうしないと
ただただやみくもに時間を節約するだけの
乾燥した灰色の時間
つまり死んだ時間を過ごしてしまうことになるから。
ニノのレストランのところなんて
ほんとうに滑稽なのに笑えない。
ジジのような仕事をしなければならない作家も
現代ではたくさんいるんじゃないかな。
それにベッポのような素朴で思慮深いひとことひとことを
じっくりと待てる会話なんてのもなかなかない。
モモの才能。
それはじっくりと聴くこと。
そしてモモに話を聴いてもらったひとは
ほんとうのことを言わずにはいられないし
また自分でも気づかなかったほんとうのことを話せるようになる。
こういうモモみたいなひとって
ときどき身近にもあらわれるけれども
現代の社会は彼ら彼女らに居場所を与えない。
時間泥棒にはかなり用心深く過ごしているぼくでさえも
知らないうちに時間泥棒たちに操られているのかもしれない。
もっと気をつけよう。
それにしても
カシオペイアはやっぱり好きだ。
いい。
すごくいい。
時間を超越した存在。
「アナタヲ サガシニユキマス!」
なんてロマンチックなこのフレーズ!
現代社会に違和感を感じるすべてのみなさん
この作品にはあなたが違和感をおぼえることの正体が書かれています。
--モモ--
ミヒャエル・エンデ
大島かおり 訳