うわあ
タイムスリップしてしまった。
平成のはじめって
もう28年も前のことになるのね。
ぼくにとっては
落語家といえば
桂米朝師匠。
それから
桂枝雀師匠。
この本は
平成元年から平成二年まで
朝日放送ラジオ番組
「ここだけの話」
で桂米朝師匠が対談した
54人の方のうち
13人の方との対談を収録したものです。
ラジオ放送では
前説が桂枝雀師匠
と本編に入る前から豪華。
あの頃は文化華やかなりし時代でしたなあ。
この本をなぜ読もうと思ったかというと
桂米朝師匠と立川談志師匠の対談が載っているから。
立川談志師匠のことはそれほどよくは知らないけれども
関東では桂米朝師匠並みにトップクラスだというイメージがある。
それにかなりの異端児的なイメージも。
で
お目当ての立川談志師匠との対談は
12番目なのだが
とりあえず最初から読んでみた。
最初は
漫才師の
夢路いとし・喜味こいし師匠。
こどもの頃にはおじいちゃん漫才っていう印象だけで
スピードも遅いし
ネタもよくわからないし
全然おもしろいとは思わなかったのだが
いまあらためておふたりの素の話を読ませてもらうと
やはりプロだなあとあらためて思う。
やっぱり戦中と戦後の復興期を経験しているひとは迫力が違う。
芸に対する造詣の深さもやはりプロ。
これはこのあと対談に登場するどなたにも共通だ。
平成元年のころでもすでに芸事から深さはかなり失われていると思うが
戦後の復興期の必死さといったら現在にはないものだと思うな。
で
その必死さというのは決してマイナスなものではなくて
やはり人間が生きていくうえでは
むしろ必要なものなのではないかという気がしてくる。
なんとなく必死になれない現在は
ある意味難しい時代なのかもしれない。
その後も対談は
地歌箏曲演奏家の菊原初子さん
指揮者の朝比奈隆さん
上方舞吉村流四世家元の吉村雄輝さん
作家の小松左京さん
歌手の島倉千代子さん
俳優でタレントの小沢昭一さん
落語家で橘流寄席文字家元で書家の橘右近さん
薬師寺管長の高田好胤さん
南地大和屋四代目の阪口純久さん
それから
落語家の立川談志師匠
最後に
大蔵流狂言師の茂山千之丞さん
と続く。
知ってる方も知らなかった方も
どなたも芸事の一流の方々。
現在
一流と呼ばれているひとたちなんて
たぶんこのみなさんから見たら
こどもみたいなもんでしょうな。
ってそれくらいひとつひとつのお話が深い。
で
なぜそんな深いお話が次から次へと出てくるかというと
もちろんみなさんの芸の深さによるところもあるのだが
米朝師匠の人間性によるところが大きいと思う。
米朝師匠は
インタビュアーの才もお持ちであったということだ。
品のある船場ことばと
多方面にわたる博識ぶりは
ぼくがこどもだったころからあこがれで
こんなおじいさんになりたい
という理想のひとでもあったのだが
すでにぼくにはそうなれる可能性が
きわめて少ないということを思い知らされつつ
この対談集を満喫したのであった。
やはりその道を究めた先達というものは
ほんものだ。
ところで
いま流行りのドーパミンについて
27年前に談志師匠が言及していたくだりには
すこしびっくりした。
さすがのアンテナ。
--米朝置土産 一芸一談--
監修 桂米團治