ひさしぶりに映画館のスクリーンで映画を観た。
収容人数40人の小規模な客席と小さなスクリーン。
客層は。
まあこういうのが好きそうなひとたちであった。
ぼくもそのなかのひとり。
もっと若くておしゃれなひとたちが観てもいい映画だと思うけど。
なぜか突如現代に放り込まれたアドルフ・ヒトラーが
冴えないテレビマンに物真似芸人と間違えられて売り出される。
インターネットという
戦前にはなかった技術を得たヒトラーは
物真似芸人と勘違いされたままその本領を発揮して
不満のたまった現代のドイツ人たちを魅了していく。
そんなに目新しいテーマではなかったが
笑っていいのか悪いのかねじれた微妙な空気感を醸し出していて
なかなかに興味深かった。
ちょっとこのヒトラー役の俳優さんの今後の身の安全が心配になるんだけど
さすがにドイツでそんなおそろしいことは起きないかな。
起きたら表現の自由も終わりだな。
ときおり挿入されるアドリブシーンと
つくりこまれたシーンとの境界が微妙で
どこまでがフィクションでどこからがノンフィクションなの
っていう不安定さもこの映画の魅力だった。
日本とは違ってドイツには
絶対的な悪
としてのアドルフ・ヒトラーがいるが
すべての罪を彼に背負わせているだけでは
人間はただしく反省をすることができない。
やはり彼にあのような所業をさせるに至った
国民の心理や動向について理解し警戒しなければ
ふたたび同じ轍を踏むことを避けることはかなわないのだろう。
--帰ってきたヒトラー--
監督/脚本 デヴィッド・ヴェンド
原作 ティムール・ヴェルムシュ