夏への扉 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

知らなかった。

こんなにおもしろいSFの名作があったなんて。

名作といわれる作品は
読んだことはないとしても名前くらいはだいたい知っている
と思っていたがこの作品は知らなかった。

完全にノーマークだった。

1956年の発表なので
すでに60年近く経っている。

SFのクラシックみたいなもんなんだろうけど
読み継がれる作品に共通の
時代を超えた普遍性
を感じさせる。

この作品は文字通り
時代(時間)を超える物語
なわけなんだけど。

それからもうひとつ。

めちゃくちゃさわやか。

読んでいる途中の
どきどきやはらはらやわくわくを
包み込むようなさわやかな読後感。

最後のページを読み終えたときに
ふうーいいもの読んだなあ
って思わず声に出して言ってしまいそうになる
そんな幸福感。

いいねえ。

猫のピートがかわいい。

やんちゃな雄猫。

そもそもこの作品を知り
読んでみようかなと思ったきっかけは
川上未映子さんの
“あこがれ”
のなかで
ヘガティーがこの作品を読んでいて
猫のピートの鳴き声の描写が楽しかったから。

「ウエアーア」
「ナーアウ」

いま思えばこの
“夏への扉”

“あこがれ”
と同じ
会いたいひとに会いに行く物語
なんだ。

さっき書いたようにこの作品が発表されたのは
1956年。

そしてこの作品の主な舞台は
1970年12月のロサンゼルス。

主人公のダンはいままさに
低体温法睡眠(コールド・スリープ)
つまり低体温による仮死状態で現在の身体状況を維持する方法で
長期低体温法睡眠(ロング・スリープ)
に入ろうとしているのだった。

彼が目覚めるのを選んだ年は2000年。

30年後の未来。

もちろん時代は30年の間に変化する。

1970年の彼の知人や友人たちも同様だ。

彼がロング・スリープに入ることを決めた理由はなにか。

そして物語はどのように動くのか。

作家の想像力と構成がたのしい。

ところで。

2015年12月を生きる現在のぼくが
もしもロング・スリープの機会を得られたら
果たしてそれを望むだろうか?

もしも望むとしたら
何年後に目覚めることを選ぶだろうか?

それはなぜ?

きっとぼくは望まないだろうと思うけど。

それはともかく。

さあ夏への扉を探しに行こう。




--夏への扉--
ロバート・A・ハインライン
訳 小尾芙佐