川上未映子さんのサイン会に行ってきましたよ part3 | (本好きな)かめのあゆみ

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先週の金曜日の夜
川上未映子さんのサイン会に行ってきた。

“あこがれ”の刊行記念。

生の未映子さんを拝見するのはこれで5回目。

初めての生未映子さんは
2010年4月に芦屋のルナホールで開催された
読書サロンの時だった。

あれからもう5年半。

いろいろあったなあ。

発売日の翌日に整理券を手に入れてから
この日を楽しみにしてきたのだ。


あいにくこの日に限って
ゆうがたに急な仕事が続けざまに入って
それでなくても週末のゆうがたで疲れ果てているところだったので
サイン会には行けないかもな
と内心思いつつ
それでもあきらめずにがんばっていたらなんとか片付いたので
ほっとしながら職場をあとにした。

紀伊国屋書店の梅田本店のサイン会場前には
ぼくの前に50人くらいが並んでいる感じだった。

ぼくのあとのひとは階段のところに並ぶことになったので
まあぎりぎりいい位置だった。

ぼくが並んですぐに未映子さんも会場入りのために
階段を上がってきた。

おお
お久しぶりの未映子さん。

眼鏡をかけていたのだが
なんだかちょっといつもと雰囲気が違う?


ファンのみなさんの拍手に包まれて
会釈を何度かしつつ
ぼくのすぐ横を通って
会場入り。

会場といっても小さい部屋みたいなところなんだけどね。

未映子さんの準備ができたらサイン会がスタート。

数人ずつ会場に案内されていく。

会場のなかは並んでいるところからは見えないのだけれど
会場の中から時折聴こえる笑い声や
サインをもらって会場を出てくるひとたちの
しあわせそうな顔を見ているだけで
明るい気分になれる。

ここにいるみんなが未映子さんのファンなんだな
と思うと
見知らぬ老若男女に親近感が湧いてくる。

1時間くらいしてぼくも会場に入れた。

会場内にはぼくの前に5人くらい。

未映子さんは眼鏡を外していた。

みなさん上手に未映子さんとコミュニケーションしていて
うらやましい。

っていうか
いつも思うことだけど
未映子さんのサービス精神はすごくて
自分からいろいろとファンのひとに話題を提供して
話しかけている。

ふつう質問はファンのほうからするもんだと思うんだけど。

あるひとは岡山から未映子さんに会うために来ていたらしい。

小学校高学年のころにお母さんに勧められて
“乳と卵”を読んで以来の未映子さんファンということで
未映子さんもそんなに若いひとがファンであるということに
驚いていた。

それから
“マームとジプシー”が未映子さんの詩でひとり芝居を公演した
“まえのひ”を味園ユニバースで観たというひとは
サイン会の会場で未映子さんにまた会えたことに
いたく感激したようで涙を流していた。

未映子さんも思わずもらい泣き。

それぞれのひとがそれぞれの思いを抱き
未映子さんの作品に触れ
この場に集まっているという奇跡。

“あこがれ”は
会いたい人がいて会えるんだったら絶対に会いに行った方がいい
っていう物語なんだけど
まさにこのサイン会がそれを具現化している。

ぼくの順番が来て
例のとおりぼくは事前に用意してきたメッセージカード
今回は先日訪れた“パウル・クレー だれにも ないしょ。”で
購入してきた“彼女は吠え、僕らは遊ぶ”
にメッセージを書いたものを渡し
“あこがれ”にサインをしてもらった。

サインにはファンのひとの名前を一緒に書いてくれるのだが
ぼくの名前を書き始めた未映子さんは
“初めて?”
とつぶやいた。

とっさには意味がわからなかったのでつい
“初めてです”
と言ってしまったがすぐに意味がわかり
“いえ、サイン会は3回目です”
と言い直した。

“お名前に見覚えがあるのよ”
と未映子さんが言うので
“覚えていてくださったんですね、うれしいです、ありがとうございます”
くらいのことを言えればよかったのだが
“ずっとファンなんです、小説は「わたくし率」から”
と答えた。

すると未映子さんは
“これからも読むに値するものを書いていきます”
と言いながら握手をしてくださった。

3回目なのでいい加減慣れてもよさそうなものだが
あいかわらずどぎまぎしてしまう。

まあこれがファンというものなのかもしれない。

ぼくがしあわせそうな顔をしながら会場をあとにしたのは
言うまでもない。

ところで
直接関係のない話だけど
ネイサン・イングランダーさんの短編に
“読者”というのがあって
ぼくはその話が好きで
いまのぼくもあの話のなかの読者のようなものかもな
なんて思う。