ぼくは滅多に愚痴らない。
と自分では思っている。
なぜ愚痴らないかというと
愚痴ってもすっきりしないからだ。
ごくまれに
愚痴めいたことを言ってしまうことがあるが
それは
特に我慢ならないことが起こったときで
かつ
愚痴を受け入れてくれるとぼくが思えるひとが傍にいるとき
にかぎる。
が
そこまで慎重に場を選んだとしても
後になってから
やっぱりあんなこと言わなきゃよかった
ともやもやとした気分になることが多い。
ふだん愚痴らないから
上手な愚痴り方を知らないので
相手に重く受け止められがちになるというのもある。
いきなり愚痴られて
相手がびっくりするのも無理はないかもしれない。
ふだんはいつも余裕のふるまいで
ときに冗談なんかも言う落ち着いたおとなが
突然なにごとかに不平を漏らすというのは
相手を戸惑わせるには十分だろう。
先日も
ちょっと愚痴っていいかな
と落ち着いて前置きをしたうえで愚痴ってみたのだが
聴いた相手はそれを自分に対する批判だと感じたようで
なぜかぼくに謝ってきた。
いやいやきみのことじゃなくて
というみずからの弁解さえぎこちない。
うっかり愚痴ってしまった自分が
まるで
おとなげなくて度量の小さい人間
であるような気になって滅入る。
愚痴るのにも作法というか慣れが必要なんだろうな。
ふだんからだれかに上手に愚痴れるひとには
ちょうどいい隙があるというか
むしろそこに余裕が感じられるというか
なんだか親近感が湧いたりもする。
愚痴っているのが魅力のひとつになっていることすらある。
うっかりすると
その愚痴をもっと聞かせてもらいたい
って思ってしまうほどだったりもする。
ぼくもそんなひとになりたいと思うのだが
どうやったらなれるのだろうか。
かといって
ふだんからつまらないことでいちいち愚痴られるのも困るのだが。
ちょうどいい感じで愚痴ること。
相手との距離も縮めつつ
自分の気持ちもすっきりするやり方で。
上手な愚痴の作法を会得したい。
という愚痴。