雨がやんだら | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

椎名誠さんが1983年に発表した掌編。


地軸の傾きが変わったんだかなんだかのせいで

雨が何か月も続く

そんな日本のあるまちの

小学4年生の少女の日記が

いつかのどこかの島に流れてくる。


現代の日本で暮らすぼくたちは

果たしてどれくらいの雨に耐えられるだろう。


1983年には地球環境の温暖化は

いわれていたのだろうか。


あるいは

現代の日本の都市を襲うゲリラ豪雨なぞというものは

予期されていたのだろうか。


ただ単に雨が長く降り続くだけでも

日照不足で農産物の収穫が打撃を受けるだろう。


さらにそれが激しい雨だとなると

河は氾濫し

建物は水につかり

あるいは流されてしまう。


やまない雨はない

なんていうのは

あけない夜はない

とか

冬のあとにはかならず春がやってくる

とかといっしょで

苦しい時期はいつかは終わる

っていう意味でつかわれるけれども

ほんとうの意味でいつやむともしれない雨は

人間の生きる希望やらなにやらを

じわじわと蝕んでいくことだろう。


雨がやんだら。


それを想像する無邪気な少女と

悪化し続ける現実への対応を求められるおとなたち。





――雨がやんだら――

椎名誠