ブレイブ・ストーリー | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

「汝は選ばれた。道を踏み誤ることなかれ」


たぶん8年ぶりに再読。


読んだときにはのめり込んだが

まあ再読することはないかな

って思っていたのに

なんとなくいまふたたび手にとってみた。


10年ぶりに要御扉でも開いたのかな?


それにしても

やっぱりいい。


コエーリョの“アルケミスト”を読んだあと

っていうのもあるだろうけど

少年が成長するものがたり

っていうのはいいね。


ミツルと違ってワタルはぜんぜんまったくほんとうに頼りない

って感じだけど

ひとを思うやさしさとか素直さとか

それに始終迷ったり悩んだりしているところが

らしくていい。


欠点も含めてそのひとを認めるふところの深さ。


それが愛

なのかな。


幻界に行くまでの第一部は

8年前と同様にまどろっこしい感じもしたけど

そのていねいな描写があってこその第二部だし

幻界に行ってからの冒険はもちろんやっぱりとてもたのしい。


特にソレブリアでの魔族の襲撃のあたりからの展開はスリリングだ。


ぼくが特に好きなのは

“旅人の道”からの終盤。


いちど追い出した自分の憎しみの感情を

ふたたび迎え入れるところなんか実にいい。


もしも予定された運命というものがあるのならば

その運命を変える方法は

自分自身が変わること。


ワタルの気づきにグッとくる。


ところで

終章はぼくが記憶していたものとは違っていた。


もうちょっとハッピーな感じの

わかりやすいエンディングだったと思っていたが

そんなにあまくはなくて

でもその方がワタルの成長を確認できるって思う。


宮部みゆきさんの作品は

きっとどれもおもしろいだろうと想像できて

だから結局この1冊

っていうか上中下の3冊しか読んでいないのだが

やっぱりこれは名作だな。


「速く走る“旅人”だけが、運命の塔を見出すのではない。運命の塔は、正しき道をたどった“旅人”の前にしか、その姿を現さぬ。」





――ブレイブ・ストーリー――

宮部みゆき