はみだす力 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

表紙を観て、おっ!と思う。


サイボーグみたい、それにきれい。


そして次にこう思う。


アーティストなのにこんなに自分を前面に出して、しかもモデルみたいなポージングとかキメて、そんなのあり?


が、その理由は、巻末のエピローグのところで明かされていて、なるほど、と思う。


全編を通してキラキラ輝いている。


既成の枠に収まらずに、はみだす者のエネルギーが眩しい。


もはや真夏の情熱の時代を過ぎたぼくのようなものには少々光が強すぎて正視できないくらいだ。


まあ、もともと血統が優れているので、こうなるべくしてこうなったというところもあるのだろうが、こんなに優れているひとでも、周りのひとと肌の色や目の色が違う、っていうだけで憂鬱な気分にさせられる、っていうのは日本の均質化された社会の負の側面である。


こどもっていうのは、無邪気で残酷なものではあるが、それを導くべき先生のフォローがなってない。


こどもながらにそれに違和感を感じているのは流石だ。


こうして、幼きスプツニ子!さんはおかしな常識の枠に囚われて衝突せずに生きることを避けて、世の中の常識を疑いながら、ぶつかりながらもまっとうに生きて行こうとしたのだった。


ただしそれはやがて角刈りの女子高生などという、非常な自意識のこじらせ方に繋がってしまうのだが、いま思えばこの時期さえも愛おしい。


さらに彼女の素敵なところは、周囲を巻き込んで何かを成そうとするところ。


生来の器用さから、なんでも自分でやってしまう時代を経て、リスペクトしあえる仲間とのコラボレーションにたどり着く。


はみだす力もさることながら、まきこむ力もたいしたものだ。


実に眩しい。


この本では、彼女の幼少期から最近までの人生を自ら駆け足で振り返っているのだが、ぼくなんかが自分の人生を振り返ってもこんなに勢いのある人生は描けないし、こんなに書ける出来事もない。


いや、まあ、それなりに書くことはあるんだろうけど、地味で暗い私小説っぽくなるのがオチだろう。


彼女は努力とアイデアと勢いにより、シンデレラストーリーの主役になってきたけれど、さて、これからどんなふうにアーティストとして育っていくのだろう。


オダサクを読んだところだからか、なんとなくこのさくさくとしたサクセスストーリーは現代版オダサク作品みたいで小気味いいっていうと的外れな感想か。


You Tube の Sputniko!さんのページにはいろいろと彼女の作品がアップされているのだが、“ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩”なんかすごくキュートでかわいい。


この作品の制作にまつわるエピソードなんかもたのしい。


バイタリティ溢れるその行動力、情熱。


何度もいうけど、実に眩しい。





――はみだす力――

スプツニ子!