もっとエロいのかと思っていたが、ちっともエロくなかった。
いや、これは批判ではなくて。
うらぶれ感、さびれ感、すたれ感に包まれていて、いつの時代のお話? って感じながら読んでいた。
ラブホというともっとこう、どきどきというかわくわくというかきらきらというか、そんな気持ちがわいてくる場であってほしいと思うのだが、ここで描かれる7つの短編は、どれもこれも貧乏くさいというか、生活感ありすぎというか、そんなに侘しいことはよそでやってくれというか、そんなセピア色の褪せた風景。
北海道という舞台が利いている。
いくらなんでもこんなに北海道が疲弊した感じだとは思わないからやはりそこはフィクションなんだろうが、ぼくたちが旅行で訪れる北海道とは異なる現実の北海道の生活が垣間見えるような気もする。
湿原を見下ろす高台に建つホテルローヤル。
本の編集としては、最初はあまりにも地味な印象から始まって、後ろに向かってだんだん作品のレベルが上がっているように感じるので、読むひとはあきらめずに読み切ってほしい。
ぼくは、“星を見ていた”と“ギフト”が、心象風景が控えめながら描きこまれていてよかったと思う。
ホテルローヤルにまつわる出来事が、時系列を逆向きに並べられている構成もいい。
ふだん、あんまり人情ものは読まないが、たまにはこういうのも悪くない。
――ホテルローヤル――
桜木柴乃