天使ってどういう性格かっていうと、きっといじわるなんだと思う。
純真無垢、っていうことはたぶんない。
そりゃあ神の使いだもの。
まっしろではいられないと思う。
とりわけ人間みたいにちいさないきものに対しては。
で、そんな天使が、眠れない夜にやってきて頼みもしないのに聞かせてくれた不思議なお話が15編。
喫茶店でコーヒーや紅茶を飲みながら時間をやりすごしたいときに読むのにちょうどいい感じ。
宇宙船で女の子をいじめる話であったり、超強力な磁石の話であったり、図書室で待ち合わせる話であったり、マジシャンの話であったり。
ショートショートというかベリーショートなお話。
とりわけぼくが気に入ったのは“クロスワードの罠”というお話。
ぼくはクロスワードパズルも数字パズルもやらない。
ふだん、ない知恵をどうにか絞り出しながら仕事をしているのに、余暇の時間にまで脳を使いたくないから。
でも、こんなにおしゃれなクロスワードならやってみたいかも。
「タテ5の鍵、これがないと世の中を渡っていけないし、女の子ともうまくやっていけません」
コマの数は5つ。
こんな問題に頭を悩ませている探偵のもとにひとりの男がやってきて…
“早撃ちキッド”もよかった。
早撃ちキッドの余りのしぶとさに業をにやした上の連中が賞金代わりに考えついたのは、早撃ちキッドを仕留めたものの夢を叶えてやるということ。
夢追い人がキッドの命を狙う。
星新一さん的世界が、ほむりん的にアレンジされているようなそんな感じ。
とぼけたユーモアとほんの少しの毒。
安西水丸さんの絵が絶妙にマッチしている。
ブレイクする前の作品だと思うが、ブレイク後の作品と比べると、きれいにまとまりすぎているような気がして、そこはやはり若さゆえの純粋さなのかな、なんて思ったりもした。
――いじわるな天使――
穂村弘
絵 安西水丸