痛快な時代劇!
ってふつうならぼくは絶対に手にとらないであろうというこの作品。
お正月にひょんなことから勧められ、読んでみたのだった。
時代劇もおもしろいねえ。
現在の福島県いわき市のあたりにあった1万5千石の小藩である湯長谷藩。
享保20年(1735年)の徳川吉宗の治世の当時、藩主は四代目の内藤政醇(まさあつ)であった。
ここまでは史実で、ここからは創作らしい。
悪老中の松平信祝(のぶとき)から、所領内で産出された金を隠し立てしているとの嫌疑をかけられ、本来8日かかる江戸城への参勤交代を5日でせよ、さもなくば藩を取り潰すぞ、と脅された湯長谷藩。
最初から無理なことをふっかけて、とにかく藩を取り潰して金山を横取りしようという魂胆。
急にそんなことを言われても時間も金もかかる参勤交代を簡単には実現できない。
藩主と家老をはじめ、家臣たちも知恵を出し合って、悪老中にひとあわ吹かせるべくなんとか出発することになるのだが…。
知恵のひねり方とか、忍びの者を含む活劇とか、男女の愛情とか、藩主と家臣の信頼関係とか、エンターテインメント要素満載で、とても読みやすくておもしろかった。
あんまりこういうの、読みなれていないから、とくに新鮮だったのかも。
で、物語の背景に、陸奥に対する江戸の侮りと、それに対する陸奥の反撃があって、それがいまの時勢とあいまって、がんばれ湯長谷藩! って応援したくなる。
って、陸奥のひとびとからしたら、ぼくらだって江戸のひとと同じなのかもしれないけど。
まあ、時代劇にはつきもののそういう政治要素抜きで、ガス抜きとかそういう野暮なことも言わずに、おもいっきり心温まる痛快時代活劇としてたのしんで読むべき。
とにかくページをめくる指が早かったよ、ほんとうに。
で、この作品、今年、映画化だって。
超最速!
俳優陣も、なるほど、ってメンバーで超いい感じ!
――超高速! 参勤交代――
土橋章宏