愛聴している1枚。
こういうアルバムはつくろうと思ってつくれるものじゃないだろう。
もちろん作者は、意図的に計画的につくったに違いないのだが、その思惑をはるかに超える作品になっている奇跡的な1枚といってもいい。
秋のまどろみの午後、できれば曇り空の日に、部屋の中でじっくり耳を傾けたい。
内面に深く深く沁み込んでくる。
きわめて内省的、けれどもほのかに希望がただよっていて、ぼくたちのありふれた生活がまんざらでもないってことをやさしく肯定してくれているような、そんな包み込まれるような気持ちになってくる。
詩と曲と声と楽器がそれ以外にありえないという完璧さで一体化している。
アルバムが全体としてひとつの世界をあらわしているので、どの曲がいいとかいえないのだけれども、強いていえば、曲と曲のつながり具合が絶妙で、もしかしてこれは1枚のアルバムをまとめて1曲なのじゃないだろうかっていいたくもなる。
といいつつ、
天気読み
暗闇から手を伸ばせ
なんかつい口ずさんじゃう。
極めつけは、カウボーイ疾走から天使たちのシーンへと進んでさらにローラースケート・パークへとつながるこの一連の25分間。
カウボーイ疾走でかろやかにこのおかしな世界からおさらばして、もぐった内面からもう戻ってこれないんじゃないかってくらいこころにぴったりと寄り添ってくれる天使たちのシーンから、ローラースケート・パークでゆるやかにこちら側へ連れ戻される。
そしてそこからさらにどこかに続いていきそうな。
小沢健二さんが書いたライナーノーツの文章がまたとてつもなくいい。
あんまり熱く語るのはおとなげないとも思いつつ、でもやっぱり好意はことばにしておこう。
いつまでも青いといわれようとも、ぼくたちは内省を続けるのだ。
――犬は吠えるがキャラバンは進む――
小沢健二