第2巻を読む前に第1巻を読み返した。
最初に読んだときにも印象に残ったけれども、10話のここにズキュンとやられた。
――無理だよ。他人が説得しなけりゃ続かないようならダメなんだ。自分で自分を説得しながら進んで行ける人間でなければダメなんだ。プロになるのがゴールなんじゃない。なってからの方が気が遠くなる程長いんだ。進めば進むほど道は険しく、まわりに人はいなくなる。自分で自分を調整・修理(メンテナンス)できる人間しかどのみち先へは進めなくなるんだよ。
さて、第2巻。
物語はさらに動き出す。
香子は恐ろしくて魅力的。
零くんは香子の痛みや苦しみがわかりすぎるくらいわかるがゆえに、いとおしくて切なくなるのだなあ。
しかも自分がその痛みや苦しみのきっかけとなっているわけだし。
それに香子が零くんを責めるひとことひとことが香子自身を傷つけているかのよう。
後藤ってやろうはなんだか嫌な感じだが、もしかして奴も棋士で、これから零くんと盤上で争うことになるような気がしたが浅はかな推測だろうか。
けれども香子はきっと将棋の世界から離れられないはず。
香子のイメージは坂口安吾さんの桜の森の満開の下とか夜長姫と耳男とかそういう感じかな。
悲しみを背負ったうつくしい鬼女。
零くんの対局相手とのエピソードにもドラマがあって読み応えたっぷり。
松永さん、年齢を重ねていてもわがままで自分中心で、よいね。
勝負師はいくつになっても勝負師ということか。
結局のところ、やはり零くんのなかにも狂おしい獣がいて、その獣の存在にようやく気付いたのだろうか。
二海堂晴信くんの熱さは、やっぱり自らのからだの弱さから来てるのかな?
いまを大切に、精一杯生きるっていう。
なんだかジーンとする。
そしてひなちゃんって、きっとそのうち零くんのことを男性として意識するようになるのではないかな。
気づけばいつも近くにあなたがいた、なんて。
そんな風に物語の先を想像してしまいます。
小説がうらやむ行間のひろさと奥行きの深さ。
こころのひだのデリケートな部分に直接触れてくるこの感じ。
羽海野チカさん、よい仕事をしてるなあ。
そしてぼくは孤高のひと、宗谷名人が気になるのである。
――3月のライオン(2)――
羽海野チカ