桃太郎 | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

きらクラ!でふかわりょうさんが次回のBGM選手権のお題を朗読し始めた。


――桃太郎は意気揚々と鬼が島征伐の途(と)に上った。


ああ、次回は桃太郎か、と思うと続いて、


――すると大きい野良犬が一匹、


えっ? 野良犬ってちょっとひどい言い方だけどもしかして、


――饑(う)えた眼を光らせながら、こう桃太郎へ声をかけた。「桃太郎さん。桃太郎さん。お腰に下げたのは何でございます?」


はっはーん、これはきっと芥川龍之介さんの桃太郎に違いない、と結論した。


ぼくは芥川龍之介さんの桃太郎を読んだことはなく、そもそも、こんな作品があるのも知らなかったのだが、猿蟹合戦は読んだことがあったので、その雰囲気の似通い方からそう認知したわけである。


果たして、やはりそうであった。


おもしろいなあ。


まことにもってブラックである。


これを機に、芥川龍之介さんの桃太郎を読んでみたのだが、なかなかにえげつない滑稽潭に仕上がっている。


桃太郎の悪いこと悪いこと。


犬、猿、雉もかなりひどい、っていうか人間的に三悪人と言いたくなる。


おじいさんおばあさんが桃太郎を鬼退治に送り出した理由もふるっている。


それにしても鬼たちのお気の毒なことと言ったら。


しかも最後に鬼たちが尋ねた質問に対する桃太郎のこたえの不条理さがまったくもって人間的なのである。


っていうか神の無慈悲、あるいは神の無邪気。


大正13年ってこういうのが書けた時代だったんだね。


自由。


そして諧謔。


芥川、天才。


ところでこれにぴったりくるBGM、なにがいいかな?






――桃太郎――

芥川龍之介