ふかわりょうさんがMCを務めるNHK-FMのきらクラ!。
番組内に一部のファンから熱狂的な支持を受けているコーナーがあります。
その名も、BGM選手権。
文学作品や詩などの一節をふかわさんが朗読して、それにふさわしいクラシックの曲をリスナーがさがして投稿するというもの。
知的な高等遊戯なのです。
次回の放送(2月17日(日))のお題はこれ。
見るに気の毒なるは雨の中の傘なし、途中に鼻緒を踏み切りたるばかりは無し、美登利は障子の中ながら硝子(がらす)ごしに遠く眺めて、あれ誰れか鼻緒を切った人がある、母さん切れを遣っても宜う御座んすかと尋ねて、針箱の引出しから友仙ちりめんの切れ端をつかみ出し、庭下駄はくも鈍かしきやうに、馳せ出でて椽先(えんさき)の洋傘(かうもり)さすより早く、庭石の上を伝ふて急ぎ足に来たりぬ。
それと見るより美登利の顔は赤う成りて、何のやうの大事にでも逢ひしやうに、胸の動悸の早くうつを、人の見るかと背後(うしろ)の見られて、恐る恐る門の傍へ寄れば、信如もふっと振返りて、此れも無言に脇を流るる冷汗、跣足に成りて逃げ出したき思ひなり。
おわかりですか?
そう、樋口一葉さんのたけくらべ。
興味はありながらも、これまで読んだことのない作品。
これを機に読んでみました。
すばらしい。
古い文体なので、読みにくかったり意味がわからなかったりするところもあるのですが、細かいことにこだわらず、独特のリズムに身を委ねて読めば、実に爽快。
躍動感あふれるいきいきとした描写。
色彩が鮮やかに目の前に広がるよう。
そしてティーンエイジャーのこころの揺らぎ、親などおとなへの心情など、みずみずしく描かれています。
まさに背伸びのたけくらべ。
そして、美登利、信如、正太のほのかであわい恋心。
いじらしいというか、素直じゃないというか、そういうところがなんだか懐かしい。
天真爛漫、お転婆でおきゃんな美登利はとても魅力的。
おとなの描き方や、活気のあるまちの表現などもとてもうまくて、まるで小説全体に血が流れているよう。
生のエネルギーがほとばしっています。
文体や言葉のつかい方も粋でおしゃれ。
気に入りました。
樋口一葉さん。
これは、にごりえや大つごもりなど、他の作品も読まねば。
原文で理解できればいちばんいいとは思いますが、上手な現代語訳の助けを借りても楽しめそうです。
ところで、BGM選手権!。
このお題にはどのクラシック曲が合うでしょうね。
本好きのみなさんならどの曲を選びますか?
――たけくらべ――
樋口一葉