今来むと 言ひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな
素性法師
すぐに逢いに行くよ、って言うからずっと待っていたのに、気づけばもうそらも明るくなってきちゃったじゃない、ふつうは夜に女性と過ごした男性が帰っていく時間よ。
たまに早起きすると、明るくなりつつある東の空に太陽よりも一足先に昇りはじめる月をみかける。
有明の月、っていうのはそんな月。
朝の始まりを予感させる、というよりも、夜の終わりを告げる、っていう感じだろう。
長月の有明の月っていうと旧暦9月の下旬の月ってことになる。
夜は恋人たちの時間。
秋の夜は長い。
そんなに長い夜を、来るかどうかもわからぬ恋人をあてどもなく待つというのは、苦しさいかばかりか。
いや、待つ時間こそ恋の真骨頂だろうか。
それにしても夜の間に恋人と過ごして、朝に去っていく男というのは、現代風にいうとどういうシチュエーションになるだろうか。
平日の夜で翌日も会社があるとして。
そこまでして泊まる?
泊まってなにするの?
おはなし?
たいへんそうだけど、実にうらやましくもある。
どうでもいいけど、長月の歌をわざわざ如月にもってきて、春の訪れる前の厳寒にこらえつつ、秋の物憂さを思い出そうと努めてみる。