道 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

道が好き。


坂道が好き。坂道を上るときには空が狭くなる。狭い空に向かって上へ上へと歩く。坂の頂上付近に来るとしだいに空が広くなる。この視界の変化が好き。そして坂を上り詰めたそこがすぐに下り坂だと一気に視界が空だらけになる。上に空。下にも空。はるか遠くに山並みが望めたりして。山登りはしなくてもまちのまんなかのちょっとした坂道でその気分が味わえる。


路地が好き。狭い道を見かけるとつい脇道へ逸れたくなる。91センチ(半間)とか182センチ(1間)とかそういう路地が好き。昔の道の名残を感じさせる。沿道の家を建て替えようとすると建物の敷地を狭めて道路を広げなければならないので、狭い路地のままのところは建物も古いままだ。そういうまちなみも好き。瓦や石を混ぜた土塀に出くわすとなおうれしい。


道路と敷地の境界が好き。路地のまんなかに、ときどきあきらかに、ここは誰でも通れる道路だけど実はここからはおれの土地なんだぞ、と主張している境界がはっきりとわかることがある。昔からある道路と建て替えのためにあらたに供出した元敷地の私有地をあわせた道路。その境目。その主張の仕方もささやかなものから大仰なものまで幅広い。小さな四角い境界標のこともあれば、明確にブロックで区切っていることもある。土地の持ち主の思いを感じる。


もしもあなたのまちのなかに、不意にそこだけ細い道路があったならば、そこにはひとがながらく暮らしてきたドラマがあるのです。