それでも三月は、また
に収められていた
を読んで
好きだな
と思った
いしいしんじさん。
以前からぼくが好きそうな作風だとは思いつつも読む機会がなくて、ようやく読んでみたらやっぱり好きだったのです。
で、2作品目。
どういうところが好きかというと、イメージ豊かでどこまでもやさしくしずかな表現。
ふつうのできごとがファンタジックになる文章。
この作品でも京都のまちなみを海のように見立ててるところとかが好き。
出産を控えたある夫妻の10月のある一日の行動と心象。
古代ギリシアの軍艦の船首像。
まつたけ。
はも。
うなぎ。
食べるものと食べられるものの混乱。
キューバの海。
ハドソン川。
マリアナ海嶺。
鴨川。
絵の森の中の青い湖。
土鍋の出汁。
水の中のトンネルでつながるこれら。
お地蔵さん。
猫の毛玉。
繰り返しあらわれるこれらのモチーフのさまざまな印象が結びつき絡み合いその境目を見失う。
不思議でゆたかそしておだやか。
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バースプラン
※どんなお産がしたいと考えていますか?
※また、母乳や育児についてどのように考えていますか?
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A4の用紙1枚があるとして、あなたはどう書きますか?
そしてあなたのパートナーはどう書くでしょうか?
とてもたいせつに生きる2人の男女。
そしてあたらしい「いきもの」。
すでに誰かの母になったひと、父になったひと、まもなく誰かの母になるひと、父になるひと、いつか誰かの母になりたいひと、父になりたいひと。
読んだ方がいいかな、読まない方がいいかな?
ぼくは読んでよかったです。
それにしても、命の誕生に携わる産科医、看護師、助産師の仕事っていうのはほんとうにたいへんだ。
だって、それぞれに滅多にない大切な出産の現場に、毎日何度も立ち会って、それでその出産するひとの気持ちとからだをマンネリにならずにいたわりつづけるっていうのは簡単なことではないだろうから。
――ある一日――
いしいしんじ