2013年最初の読書にはおよそふさわしくないであろう作品を読んだ。
芥川龍之介さんの
二つの手紙。
ものすごい緊迫感だ。
短編というか掌編で
一気に結末に向かって疾走する。
あいかわらず見事な構成で巧みな文章だ。
カッコよすぎる。
天才。
大好き。
ドッペルゲンゲルを扱っている。
ぼくはふだんはドッペルゲンガーと言っているが。
警察署長にあてた二通の手紙。
一人称で語られるこの作品の緊張感は
太宰治さんの
駆込み訴え
をほうふつとさせる。
妻と自分のドッペルゲンゲルを見た。
妻はそのドッペルゲンゲルにより世間から不貞の疑いをかけられている。
妻は潔白だ。すべてはドッペルゲンゲルの仕業だ。
妻にはヒステリーの症状があったがドッペルゲンゲルのせいでさらに症状が悪化した。
あのう、そうおっしゃられましても。
そんな話をいったいだれがまともに聴いてくれるんですか。
頭のおかしいひとの妄想としか思えないでしょう。
果たしてドッペルゲンゲルの出現は真実か虚偽かあるいは幻覚か。
超自然に出会ってしまったひとの恐怖とそれを信じてもらえないもどかしさ。
それとも苦痛により精神を病んでしまったひとの滑稽な哀切。
大正期を舞台にしたサイコ・スリラーとしても良質。
っていうか相当怖い。
どうか初夢にぼくのドッペルゲンガーが出てきませんように。
――二つの手紙――
芥川龍之介