本の世界と現実の世界の交錯 | (本好きな)かめのあゆみ

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今日の夕刊の記事をみてびっくりした。


大阪の千日前で演芸場「トリイホール」を経営する鳥居学さんが僧籍を取得してホール近くに自ら寺院を構えたという。


記事のなかでも触れられているが千日前は江戸から明治の初めまで刑場があった場所。


そのことを知ったのは今読んでいる中沢新一さんの大阪アースダイバーでだった。


この本を読んでいなければぼくはこの記事を素通りしたに違いない。


大阪アースダイバーのなかでは刑場と演芸は根が同じであるという趣旨が書かれている。


いずれも秩序のある社会とそこから隔てられた死の世界とを繋ぐ接点であるという考え方だ。


それだけにこの千日前の演芸場の経営者が僧侶に転身したという記事はおおいにぼくを驚かせた。


死と演芸。


この結びつきがいかに原初的で重要な人間の営みなのか。


しかもこの新しい寺院というのが繁華街である千日前の雑居ビルの1階に位置するという。


猥雑な商業と演芸のまちと死の世界を結ぶ接点としてこれほどふさわしいロケーションはない。


千日前は法善寺や竹林寺が千日念仏を行っていた当時の面影を失い住職が住まぬまちになっていたという。


この新しい寺院をきっかけに千日前の賑わいが戻ればこれは何かの縁を感じずにはいられない。


世界はとても強い力で落ち着くべきところに落ち着くように出来ているのだろうか。