余った傘はありません | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

夜にはずっと深い夜を

に続く小説第2弾。


前作同様こちらも怪しい雰囲気の

病的な作品です。


鳥居みゆきさんは読書好きで

太宰治さん

坂口安吾さん

夢野久作さん

筒井康隆さん

安部公房さん

などなどの作品を読んでいると

過去に何かで話していたようないなかったような。


小説としてはどうしても本業の作家のみなさんには及ばないと思いますが

お笑い芸人さんの域は軽く突破しています。


そもそも本業の作家と比べることにはまったく意味がありません。


鳥居みゆきさん自身もそのことは自覚しているでしょう。


しかしながらこの作品をコント台本と思いながら読むと

にわかに輝きを増してきます。


鳥居みゆきさんのひとりコントを知っている人なら

彼女のシニカルでブラックなユーモアを理解できるでしょう。


この

余った傘はありません

は連作短編風になっていますが

ひとつひとつの作品と全体とが複雑に混じり合いながら調和をとっていて

よく計算されています。


登場人物が入り組んでいて1度読んだだけでは掴みきれません。


思わず2度読みました。


病的なんですけど

これをまじめに読んだら駄目なんですね。


あくまでもブラック・ジョークなんです。

コント台本なんです。


こういうのは苦手な人と好きな人に分かれるでしょうけど

ぼくは好きな人なのでよいのです。



ぜひとも鳥居みゆきさん自身に舞台で演じていただきたいです。


ときに憑かれたように

ときに人を食ったように

ときにはにかみながら

演じる鳥居みゆきさんの姿が目に浮かぶようです。


備忘録的に登場人物の連関表を。


柏木よしえ(ときえの双子の姉)

柏木ときえ(よしえの双子の妹)


春山健太(よしえの息子)

春山早苗(健太の妻)

春山ミチル(健太と早苗の娘)


百合子(ときえの娘)


これで合ってるかな?


ちょっと自信なし。


普通の単行本と違って

本のつくりこみがかなり凝っていて

金かけてるなあ

って感じですが

それだけに美麗な装丁です。


黒に白が映えます。


ちなみに巻末の著者略歴の中間部分が笑えます。


きっと自分で書いているんでしょう。


――――――――――――――――――――


著者略歴


鳥居みゆき


1981年生まれ。秋田県出身。

不条理世界を演じるコントで異彩を放つお笑い芸人。

バラエティ番組、ライブ等で活躍するだけでなく、

『全然大丈夫』『やさしい旋律』『非女子図鑑』

『臨死!!江古田ちゃん』など映画・ドラマにも多数出演。

「狂宴封鎖的世界」というシリーズでは、

自ら舞台に立ちつつ、プロデュースから脚本、演出、

小道具づくり、ケータリング手配、打ち上げセッティング、

レジでのガム配り、支払いまですべてをこなす。

その著書『夜にはずっと深い夜を』(幻冬舎)では、

タレント本の枠を超えた高い評価を得る。

――――――――――――――――――――


とにかく鳥居みゆきさん自身が自らの居場所を見つけて

意気揚々と好きなことをやっている感じが伝わってきて

ファンのぼくもうれしい気分になるのです。


壁にぶつかることもあるでしょうけど

いつまでも人間のダークサイドに光をあてつつ

それでも愛すべき存在のどうしようもない人々の世界を

表現していただきたいです。




――余った傘はありません――

鳥居みゆき