半年越しに
積読本を手にとれた。
ファウスト効果。
読書界に復帰できてよかった。
阿部和重さんの小説は
ピストルズを読んだのみ。
ピストルズは
かなりの長編が
あまりにも淡々と描かれるので
読みながら
欲求不満がたまり続けた。
派手な内容も
淡々。
おもしろいのに
淡々。
で
この
グランド・フィナーレ
も淡々。
阿部さんの作品の特徴である
虚実のシームレス構造。
虚構の世界に
現実の事件が絡み合う。
淡々とした筆致が
その構造を効果的なものにしているのだろうか。
そしてもうひとつの特徴。
作品間のクロス・オーヴァー。
グランド・フィナーレの主人公は
確かにピストルズにも出ていた。
そしてピストルズのあのお芝居は
グランド・フィナーレのこの話の続きだったのね。
虚と実
作品と作品が
つながりあうことによって
作品を超えた厚みが生まれているようでもある。
和子の部屋
で阿部さん自身も述べているが
緻密に構成した作品世界を
読者に余さず伝えるために
ことばにことばを重ねずにはいられないこと。
そして
作品世界を完全に作者の手中におさめているがゆえに
読者に想像の余地を残さないつくりかた。
ひとつの考え方ではあるが
行間の想像を楽しみたいぼくとしては
残念だとも思うのである。
-グランド・フィナーレ-
阿部和重