ファウスト | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

積読本も何冊かあるうえに

読みたい本が多過ぎて

選択肢過多。


あふれる本の海で遭難しているように

結局どの本を手にとったらよいのか

選択ができない状態が

しばらく続く。


読みたい本のリストとのにらみ合い。


なんのインスピレーションか

行き詰った空気のなか

ふと手にしたのは

ゲーテさんのファウスト。


本の海の灯台が照らしたのだろうか。


何年も前に

賢い気分に浸りたくて

読んでみた1冊なのだ。

(実際は新潮文庫で2冊。)


読み始めてみて

ことばの美しさにぐいっと呑み込まれた。


しばらくこの本をお供にしてみよう。


比喩やら暗喩やらの続出でちんぷんかんぷんなのは

当時のままだが

それでも

今のほうが全体の意味がよくわかるような気がして

なんだか不思議。


忘れていたけど

戯曲仕立てだったのね。


とうてい実際には

舞台で演出できないようなト書きだらけなので

あくまでも戯曲仕立てであって

戯曲ではないのだろう。


美しいことばは

ゲーテさんの原文はもとより

訳者の高橋義孝さんの

力によるものなのだろう。


詩が多用されるこの作品の翻訳は

至難の業だったに相違ない。


目を瞠(みは)るのは語彙の豊かさ。


難解ではあるが

単に難解というわけではなくて

必然性があることば選びで

おそらくは原文とは違った

雰囲気にもなっているかもしれないが

日本語に翻訳された作品として

読み応えのある仕上がりになっている。


主人公たるファウストは

飽くなき好奇心で世界を究めつくそうとするが

ところどころ自己中心的で

酷いやつでもある。


しばしば

ゲーテさん自身の投影ではないかと思いたくもなるが

それはこの作品を楽しむのには邪魔になるだけだろう。


寓話的な部分が相変わらずのぼくの好み。


メフィストーフェレスとファウストのやりとりは

実に知的で愉快だ。


無邪気に正道を進んでいるつもりのファウストよりも

悪魔として悪魔の本分を全うしようとするメフィストーフェレスのほうが

人間的だ。


ファウストはちょっと駄々っ子みたいでもある。


メフィストーフェレスにはユーモアとか哀愁とかもある。


もちろんファウストを貶めるのが目的なので

やることは悪魔的なのだが

しくじったり予想外の展開になったりして

ぶつぶつ言っているところが他人事ではない。


ラストで天使たちにしてやられるメフィストーフェレスは

もう滑稽というか可哀想というか

ある意味突き抜けてかわいいというか。


ところで

第1部と第2部ではがらっと雰囲気が変わるので

両方読んでこそのファウストである。


矛盾するようなことをいうが

通して読まなくても

ところどころ抜き読みしても

美しいことばの表現に出会えるので

そういう読み方もあり。



いつの日か

ある刹那に向かってぼくも叫びたい。


とまれ、お前はいかにも美しい。





-ファウスト-

ゲーテ

訳 高橋義孝