いやあ
おもしろかったです。
久々に最初から最後まで楽しんで読めました。
阿部和重さんが
和子に扮して
売れっ子女性作家さんのお悩みを聴く
という体で進む対談集です。
対談相手は次のみなさん。
角田光代さん
江國香織さん
川上未映子さん
金原ひとみさん
朝吹真理子さん
綿矢りささん
加藤千恵さん&島本理生さん
川上弘美さん
桐野夏生さん
ね豪華でしょ。
和子が人生相談から入って
彼女たちの創作にかかる秘密を
次々と引き出すさまは爽快で圧巻でした。
阿部和重さんはこの対談の時期
乗りに乗っていたのでしょう。
快刀乱麻を断つがごとくに
ズバズバと鋭く斬り込んでいきます。
彼女たちもついつい乗せられて
正直な心情を吐露します。
見事。
この対談のころ阿部和重さんは
四姉妹が主人公の長編
ピストルズ
を執筆中で
それで女性心理を巧みに読み解き
ふところに入り込むことに
成功したのでしょう。
このタイミングでしかありえないくらいの
傑作対談に仕上がったと思います。
内容は小説好きにとっては
興味津々。
ああ彼女たちはこんな風に考えながら
創作をおこなっているのか
って。
それに
ぼくがふだんこのブログに
あたかも重大な発見ででもあるかのように
もったいぶって書いている
ものの見方とか考え方とか
そういうものがさらっと
ひとことで語られていて
ショックを受けるとともに
さすがだなあと思ったり。
かろやかに深いです。
技術的なヒントも
創作やことばに対する態度も
作家の私生活も
編集者との関係も
いろいろなものが垣間見えて
作家業の楽しみや苦しみが
少し身近に思えるような気がします。
読む人つくる人に関係なく
ものがたりにかかわる人の
教科書あるいは副読本として
座右に置いてもいいでしょう。
書くことの終わりが見えません
という
朝吹真理子さんの聡明さは
次元が格段に違うなと感じました。
とにかくおもしろいです。
設定がまたいい。
喫茶室や
バーや
ホテルの迎賓室などで
ふたりきりで進められる
対談の場面設定。
それぞれが
のちに文章を確認するために
レコーダーを前にして語る。
いい対話は記録に残したくなるけれど
日常生活ではそうはいかないですからね。
うらやましいです。
女性作家のみなさんが和子にしたためた
相談の手紙も素敵。
作家さんの手紙ってそれだけで味がありますよね。
しかも十人十色の表現スタイル。
この手紙が対談のきっかけになります。
そしてその手紙を対談本番に
相手の目の前で初めて読む和子。
自分の瞬発力を鍛えるためと
ライブ感を大切にするためとのこと。
これも見事でした。
阿部和重さん
聞き上手で語り上手。
態度が客観的で頭脳明晰。
自分のやり方がはっきりと見えているからこそ
相手に対する分析もズバリと正鵠を射ていて。
それでいて決して
押し付けがましくも
説教くさくもなく
素直に聴けるんですよね。
これはなんなんだろう。
この聴き手
この相談者
この時期
この場所。
二度とはありえない
化学反応がこの本のなかで起こっているのでしょう。
-和子の部屋 小説家のための人生相談-
阿部和重