(其の四 ヤチホコと女たち - 求婚と嫉妬の物語 はこちら )
其の五 国譲りするオホクニヌシ - 天つ神と国つ神
オホクニヌシが葦原の中つ国を治めて幾星霜。
葦原の中つ国はにぎわい穏やかな暮らしが長く長く続いた。
ところがあるとき
高天の原を治めるアマテラスが
葦原の中つ国は自分のこどもである
マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミが
治めるべき国であると言い出した。
マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミは
スサノヲがアマテラスの玉から最初に吹き成したこどもである。
アメノオシホミミは
葦原の中つ国の様子を見て
ひどく騒がしく荒れているので
このままでは降りられないと
アマテラスに報告する。
にぎわい穏やか?
騒がしく荒れている?
天つ神と国つ神の感覚は
違うのである。
アマテラスは八百万の神々と相談し
賢いオモヒカネに命じ
葦原の中つ国を落ち着かせて
高天の原に服属させるための遣いを
誰にするかを考えさせた。
選ばれたのはアメノホヒ。
しかし葦原の中つ国にアメノホヒが降りてから
3年経っても音沙汰なし。
確認のために第2の遣いを選ぶ。
遣いの遣い。
オモヒカネが選んだのはアメノワカヒコ。
アメノワカヒコに
アメノマカコ弓とアメノハハ矢を授け
葦原の中つ国に送り出した。
しかしアメノワカヒコは
オオクニヌシの娘のシタデルヒメを妻とし
葦原の中つ国を自分のものにしようと企んだ。
またしても
8年経ってもアメノワカヒコから音沙汰がないため
アマテラスとタカミムスヒは
第3の遣いを検討する。
遣いの遣いの遣い。
これまでの神選の失敗で
すっかり信用を失ったオモヒカネは
キジのナキメを選ぶ。
キジとはすなわち鳥のきじである。
葦原の中つ国の
アメノワカヒコの家の門までたどり着いた
キジのナキメ。
天つ神の教えのとおり大声で鳴き声をあげたところ
アメノサグメがアメノワカヒコをそそのかし
アメノマカコ弓とアメノハハ矢でもって
ナキメを射殺した。
その矢は高天の原のアマテラスとタカギの神のもとに届く。
血の付いた矢をみたタカギの神は
アメノワカヒコへの呪言(まじないごと)を述べて
その矢を地上に向けて突き返す。
矢はアメノワカヒコの胸に突き刺さり
アメノワカヒコは死ぬ。
アマテラスは次の遣いを考える。
アメノトリフネをタケミカヅチに副えて送り出す。
ようやくここで
タケミカヅチはオホクニヌシに国譲りを迫る。
タケミカヅチは
オホクニヌシと
その跡継ぎである
ヤヘコトシロヌシとタケミナカタを
力でもって屈服させる。
こうして
オホクニヌシの時代は終わる。
肝心なところをだいぶ端折っているので
意味がわからないメモになってしまったが
今回はかなり激動だった。
幾度にもわたる遣いのやりとり
タケミカヅチと
オホクニヌシたちとのやりとり。
なかなかに読み応えがある。
出雲の国を中心に繰り広げられる
天つ神と国つ神の権力闘争。
神話とはいいながら
なにがしかの現実世界の影響は受けているのに
相違ない。
思わず
掘り下げて神話に秘められた真意をさぐりたくなる。
いかに歴史的資料の裏打ちがあったとしても
所詮は想像による理由のあとづけに過ぎないのだが。
おもしろい
っていう表現はあまりに芸がなさ過ぎるが
三浦祐之さんのこの本は
実にわかりやすくてとっつきやすいのだ。
日本の神話も世界の神話にひけをとらない。
に続く
-口語訳 古事記 〔完全版〕-
訳・注釈 三浦祐之