川上未映子さんの
すべて真夜中の恋人たち
を読みたくて購入した
群像 9月号には
石原吉郎さんの散文
ペシミストの勇気について
と
3編の詩
さびしいと いま
待つ
泣いてわたる橋
が掲載されています。
そして
特集 戦後文学を読む
第6回 石原吉郎
合評
ペシミストの勇気について
棒をのんだ話
として
奥泉光さんと山城むつみさんと川上未映子さんが
合評しているようすが収録されています。
正直
この特集を読むまで
石原吉郎さんという人を
知りませんでした。
収録されている3編の詩は
いまのぼくにはよく分からないけれども
ペシミストの勇気
は胸に響きました。
戦後
ソ連の収容所に送られ
各地を転々とさせられ
異常に困難な環境の中で
非人間的な
消耗品扱いのような
強制労働をさせられた日々の
回想です。
同僚である
鹿野武一の徹底したペシミストとしての姿勢を
尊敬の念を込めながら回想しています。
人間性を奪われ
被虐待者でありながら
同時にその被虐待者の集団の中で
生きるか死ぬかの瀬戸際に立ったものたちによる
さらなる虐待と被虐待の立場の発生。
鹿野武一はその枠組みに入ることを拒み
自らの意思でさらに困難な道を選んでいきます。
その姿勢にはぼくも共感します。
過酷な状況の中
如何にして生きるか。
それは生き延びるための方策ではなく
生き方の問題です。
極限状況を経験したもののみが表現することを許される
そんな文章。
三氏の合評もさすがです。
プロはこういう風に読むのですね。
なるほど。
もっとも
作家当事者不在の合評は
得てして評者の独りよがりになりがちな点は
忘れてはいけません。
-ペシミストの勇気について-
石原吉郎