夫婦善哉 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

谷崎潤一郎さんの

春琴抄

と同じく

読みたいなあと思ったときに限って

書店に在庫がなくて

なかなか出会えなかった本です。


ようやくタイミングが合いました。


文庫で50ページほどの短い作品です。


大阪人なら一度は読むべしと思いつつ

上記の理由で今になりました。


文体が独特で

ひとつの文章の中で

視点がしばしば変わっているようで

慣れなければ読みづらいですが

ぼくはこういう文体は得意。


短い話の中に

かなりの展開が盛り込まれていて

さくさく進みます。


これぞ

なにわ文学

といったところでしょうか。


谷崎潤一郎さんの作品は

どちらかというと

上流の関西人の生活風俗が描かれていますが

この作品は

庶民的な風俗が描かれていて

これはこれで興味深いです。


あたかも宣伝ででもあるかのように

なじみのまちの飲食店や地名などが

ちりばめられているので

さながらまちの歴史の記録でもあるようです。


さて内容。


柳吉はいい女性に惚れられたなあと

羨ましくなります。


そんなに魅力的な男性とは思えないのですが。


蝶子はかわいいですよね。


バイタリティに溢れているし。

陽気で華やかだし。


苦労をするところも多いけれども

蝶子が幸せそうに生きているので

うれしくなります。


駄目夫である柳吉への折檻は

少々悪趣味な気もしますが

それはそれで二人の愛のかたちなんですよね。


そもそも柳吉があかん過ぎるので。


ぼくも蝶子のような世話好きで愛情の濃い女性に

追いかけられたいですが

ぼくみたいなタイプには蝶子のような女性は

そそられないんでしょうね。


世の中のやるときはやる駄目男と

駄目男を支える愛に酔う世話好き女の物語

というと誤解ですかね。


ともかく文章の勢いが素敵な作品でした。





-夫婦善哉-

織田作之助