セムリの首飾り | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

初期の短編ということですが

美しくて悲しい物語になっています。


もともと

サンデル教授の

これからの「正義」の話をしよう

オメラスから歩み去る人々

のエピソードが紹介されていなければ

決して読んでいなかったと思いますが

ル=グィンさんの短編集は

なかなかのものです。


SFファンタジーが好きな人なら

ル=グウィンさんの描く世界は

きっと大好きなんだろうなと思います。


読めば読むほど

物語世界から帰ってきたくなくなります。


この

セムリの首飾り

にしても

世界観に慣れていないせいか

途中まではなんだかよく分からない

物語でしたが

構成が分かると

醸し出す不思議な雰囲気が

絶妙だということに

気づかされます。


私たちの常識とか

考え方とか価値観では

決して推し量ることのできない

それぞれの世界の気高い文化っていうのが

表現されています。


物語世界についての説明が

ことごとく省かれているので

むしろ想像がどんどん膨らみます。


萩尾望都さんの作品世界と通じる

雰囲気を感じました。


この短編集

風の十二方位

では

ル=グウィンさん自身が

回顧展風に各作品を解説していて

その内容も実に的確で興味深いです。


-セムリの首飾り-

作 ル=グウィン

訳 小尾芙佐