偽札づくりで
日本の貨幣経済を破綻させ
あらたな価値観を持つ
共同体を形成しようとする
そんな男の物語。
主人公は
作者の島田雅彦さんの
分身であるかのような
ハンサムで
ダンディで
孤独で
嘘つきな
男。
アジアをまたにかけて
主に中国と日本を舞台に
物語は進んでいきます。
島田雅彦さんのワールドを
愛好するぼくには
とてもとても読みやすい作品でしたが
一見さんでも
すっと入れるくらい
エンターテインメント性が高い
作品に仕上がっています。
政治、経済、犯罪を題材にしていますが
妙にリアリズムを追求していないので
小難しいことはなく
ダイナミックな印象です。
そうはいってもそこは
島田雅彦さんのこと。
まことしやかに
虚構の世界を作り上げています。
好きなシーンはやっぱり
禅僧との茶の湯の場面。
こういう人をくったような
やりとりの中に仄見える
哀しい真理がぼくの好物です。
以前の作品のような
一見さんお断りの
カルト的な作品も捨てがたいですが
こういう作品もうまくまとめるなあと
あらたな魅力を見させて頂いた
そんな気分です。
映画化かドラマ化されても
良いかもしれません。
-悪貨-
島田雅彦