ずっと気になりつつ
ようやく読みました。
意外と短編でした。
幻想的で
狂おしいほどに
美しくて
恐ろしいです。
不思議な文体で
わざと美文を書くまいとしている
そんな気配を感じます。
桜の森の満開の下
っていうと
現代的な感覚では
贅沢な美しさと思いますが
鈴鹿峠で
山賊が出るかもしれない危険な山奥で
人が誰もいない
降ってくるような
桜の森の満開の下を
通り抜けなければならないとしたら
やっぱり恐ろしいでしょう。
そんな静かな恐ろしさの表現が絶品です。
美しすぎて恐い
っていう経験は
ぼくは今のところないですが
自分を狂わせてしまうくらい
美しいものに出会ってみたいとも思います。
それにしても不思議な物語です。
意味を考えようとすると
するりと逃げ出していきそうです。
手からこぼれる美しさ。
女の美しさと怖ろしさ
っていうメッセージを読み取りたくもなりますが
それが無意味であることがよく分かります。
つかみどころがないけれども
疑う余地のない
美
がここにありました。
読後に余韻が響きます。
ぼくも
桜の森の満開の下で
花びらに埋もれるほどに
身動きもせずに座っていたいです。
-桜の森の満開の下-
坂口安吾