最早下には戻られない。
上へ上がるしか道は残されていない。
21階の扉を調べる。
動かない。
22階。
動いた。
扉がかすかに動いた。
期待に胸を躍らせ、扉を引く手に力を込める。
開放。
おめでとう。
やっと出られる。
悪夢よ
さようなら。
原因は追って調べよう。
が
しかし
扉の向こうに広がる光景は
何たることか。
小部屋に飲み物の自動販売機が
置かれているだけ。
自動販売機は壁に埋め込まれている。
部屋を見渡したが
さらに外につながる扉は見当たらない。
念のため自動販売機を動かそうと試みたが
びくりともせず。
ひとまず脱出のことは横に置いて
ミネラルウォーターを買うことにする。
喉が渇いていることに気がついたからだ。
警戒しながらコインを入れると
いつもと何にも変わらぬ調子で
水のペットボトルがはじき出されてきた。
味もいつもどおり。
運動の後の水は格別のうまさ
なんて思いながら
椅子もないので床に直接座りこんで
休憩することにした。