ポトスライムの舟 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

地味。

でも好き。


ちょっとしんどいことが続いた人の

日記を小説仕立てにまとめたら

こんな風に仕上がるのでは

という感じで地味な物語でした。


ドラマチックな設定も展開も

一切ないので

ドラマにはならなさそう

というか

演ずる俳優が

思い浮かびません。


単館系の映画なら

いい味がでるかな。


新卒で採用された会社を

上司のモラルハラスメントやら

職場のパワーゲームやらで

ぼろぼろになって

退職し


その後に何とか勤めた

化粧水工場のラインの仕事の

1年間の手取り収入の合計と

よくみかけるあの世界1周船旅の料金が

ほぼ同じであることを発見し


1年間給料を貯め始める主人公の女性。


母親と築50年の古い家で同居しながら

そのほかの掛け持ちの仕事の

収入だけで生活をしていきますが


最小の消費と

やむを得ずの出費

で切り詰めた生活を行っていきます。

小遣い帳みたいな表現が

効いています。


人間関係も

大学時代からの3人の友人と

そのうちの1人の娘と

母親と

化粧水工場の同僚の1人だけという

少数ながらも

濃い関係。


濃いといっても

主人公は

感情を極めて抑えているので

(我慢しているわけではなさそうですが)

淡々と描かれていきます。


ホントに狭い世界の話で

天下国家を論じたり

人間観を覆したりするような

壮大さは微塵もありません。


実に地味な話なんですが

身につまされるんですよね。


共感する部分は多いです。


普通の小説なら

うるっとさせる描写にできるところを

津村記久子さんは

あえて淡々と描きます。


ポトスの生命力が

主人公の派手ではないエネルギーと

重なって

一筋の明るさを示しています。


蟹工船は読んでいませんが

デフレ時代の現代に生きる

30歳前後の女性の

プロレタリア文学といっても

いいのではないかと

思いました。


ホントに地味で

近頃

こんな生活してる人って

結構多いよなあ

と思う作品でした。


余韻も残っています。



-ポトスライムの舟-

津村記久子