彼岸先生 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

夏目漱石の

こころ

を読んで

久しぶりに読みたくなった

作品です。


以前読んだときは

夏目漱石の

こころ

のパロディのように

感じましたが


今回読んで

さらに

ヴィヨンの妻

など

太宰治作品の

パロディでもあるように

感じました。


「先生」

「菊人」

の関係は

まさに

こころ

なんですが


「先生」

の放蕩ぶりったら

無茶苦茶です。


しかも

その放蕩の動機が

太宰治的

というか

破滅的というか。


破滅的っていうのも

おかしいかな。


とにかく

「先生」は

自分自身の生き方を

自らのフィクションとして

演じようとします。


そして

そのフィクションの

演出は

ひっきりなしに

変更を

繰り返します。


普遍的な何かを

求めるが故に

常に流転し続けることを

余儀なくされているような。


自分でフィクションの

演出をしているつもりが

いつの間にか

何らかの力によって

演出されているという。


わたしは

自分のフィクション

であると同時に


誰かのフィクション

でもある。


「先生」と

奥さんと

恋人たち

「菊人」

との

奇妙な

関係は

以前読んだときの

ぼくにとっては

ものすごく

不思議だったけど

こんな関係も

ありかな

とも思いました。


生きながらにして

現世から自由な

彼岸に到達している

心境。


永劫の観察者。



-彼岸先生-

島田雅彦