どの1行にも
どの登場人物にも
共感できる。
文庫で僅か14ページの
短い作品だし
発表されたのも
大正5年だけど
現在のさまざまな作品より
その心情が理解できる
ような気がする。
作者いわく
テーマは2つ。
欲望の終着点を
自ら決め
足るを知る
ということの難しさ。
放っておいても
いずれ死ぬ状態の人に
苦しいから早く死なせてくれと
頼まれたときに
それに応えることは
ほんとうに殺人なのか。
際限ない欲望の問題も
安楽死の問題も
大正の頃と
全く変わらず
というより
むしろますます深刻に
なっているのに
それに明快に答える
人間の知恵は
いまだ現れず。
つまりは
人間が生きるうえでは
永遠の課題なんでしょう。
とにかく
心情にしても
情景にしても
台詞にしても
実に端的に
核心をつきながら
描かれています。
それにしても
遠島送りにされる
罪人と
真夜中に
小船に乗って
京都から
大阪まで
行く道程の
同心の
心情や
如何ばかりか。
-高瀬舟-
森鴎外