スターリンって恐い。
恐怖政治なんて怖ろしい。
社会主義だか
共産主義だか
民主主義だか
資本主義だか
何がどう違うのかよく分からないが、
どのイデオロギーにも、
表裏、功罪があり、
それに翻弄され苦しめられる人々がいる。
実は翻弄とか苦しみとか、
生やさしい言葉では表現できない。
現在の日本の政治に翻弄されて
不幸になっている人ももちろんいるけれど、
スターリン体制下のソ連圏の人々は
ほんとに生き地獄を味わっていたと思う。
この物語はフィクションではあるが、
ここに書かれていることは、
かなりありえる話だと思う。
突然、身に覚えのない容疑で
着の身着のまま連行される不気味さ。
連行された後の、驚くべき悲惨な処遇。
それを無表情にやってのける権力機関の暴走。
読んでいて、自分が生きている間にも
このような恐怖の時代がやってくるかもしれないと
不安になった。
今、突然、理由もわからないまま
自分が政府への反乱者として逮捕され、
連行され、劣悪な施設へ投獄され、
拷問され、処刑され。
それ以上に、何故か家族に容疑が及び
悲惨な境遇に陥れられることに
耐えられるわけがない。
そんな絶望的な状況の中での、
登場人物たちの生き方には、鬼気迫るものがあった。
厳しい物語なのに、
彼女たちの生き方が明るい希望として
全編を貫いていたので、
読後にある種の爽快感が残った。
上質のサスペンスであるだけではなく、
自分の住む世界が
容易に不条理な地獄の世界に
変わりうると感じさせられた。
もっとうまく表現できないのがもどかしい。
とにかく、多くの人が読んで欲しいと思う。
読んで、もっとうまい感想を書いていただきたい。
謎解きとしても実に読み応えがあります。
女性の生き方としても励まされる人も多いのでは。
バレエやダンスを愛する方にもお勧めです。
ロシアの冬の寒さや、
芸術的な都市の雰囲気、
ロシア人の骨太の気性も感じられます。
いろんな方がおっしゃっているように、
タイトルからは想像できない凄絶な物語ですが、
やはりタイトルはこれしかないでしょう。
-オリガ・モリソヴナの反語法-
米原万里