---あのロボット、よちよち歩きがなんだかカワイイ
---おい、ロボットくん、君が行きたいのはこっちだろう
そのロボットの周りには、いつも優しい顔の人間たちの輪ができていた
よちよちとおぼつかない足取りで街を歩くロボット
まっすぐしか歩けないが、目的地を首からぶら下げている
頼りないので、見るに見かねて周りの人間がロボットの手助けをする
手助けの過程で周りの人間同士のコミュニケーションが生まれる
人間は弱いものを見ると手助けしたくなる
弱いロボットは、人間の手助けの気持ちを引き出す道具として世の中に生まれた
けれど弱いロボットは考える
---ぼくを助けることで人間たちが笑顔になる
---でもどうして弱いものがぼくである必要があるのだろう
---人間の周りにも子どもや老人や病気のひと、弱い人たちはたくさんいるのに
人間は、本当に弱いものには関わりあいたくないと思っている
面倒なことに巻き込まれると思っている
本当に弱いのは、
弱いロボットに助けられなければコミュニケーションもままならない人間
ある秋の真夜中
心の弱い人間に破壊された弱いロボットの残骸が
河川敷の薄暗い橋の下に転がっていた